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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十章 『征夷大将軍』対策会議

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第51話 奇想天外な『将軍様』の奇跡

「それでまた飛ばされた……さすがの軍上層部も嫌がらせに近い怪文書を毎日送りつけられたら怒るだろう」


 カウラの言葉にかなめは静かに首を振る。


「相手は『将軍様』だぞ?そんなことを理由に異動なんてできねえよ。なあに、この程度はかわいいもんだ。もっとすごいことが起きた。さすがに軍の上層部も肝を冷やすような大事件がな」


 かなめはここで表情を真剣なものに変えて一同を見回した。


「すごいことですか?大事件?ボロって国は平和なんでしょ?そんなところで何が起きたんです?」


 簡単に反応した誠の顔を見てかなめはニヤリと笑う。騒動好きなかなめの嗜好に合うような事件が起きたと察して誠は冷や汗をかいた。


「まあな。こんな上官だ。部下はまあ、仕事が終わればこの馬鹿を肴に集まって酒を飲む日常を送っていたんだそうな。その日もかわいそうな麗子の馬鹿の部下達は飲み屋で酒を飲んでいた。本来なら治安の良いポロだ何も起きないはずだった」


 かなめは目の前で腕を組んで深刻な口調でそう言った。


「その言い方。起きたってことね?何が起きたのよ、もったいつけずに言いなさいよ」


 棒読み口調のかなめの言葉尻をアメリアがとらえる。


「そう、本来起きないはずの出来事が起きた。なんだかよく分からないけど、突然その店の前にアサルト・ライフルで武装したテロリストが一名現れて、店の入り口から店内に向けてフルオートで銃をぶっ放した……どうだ?考えられない大事件だろ?」


 あまりの展開に誠達はあんぐりと口を開けた。治安の良い東和で育った誠からしてもそれは信じられない出来事だった。


「嘘……そもそも銃規制の厳しいベルルカンの南部地方にそんなレアなテロリストが堂々と街中を歩いてるのよ?おかしいじゃない」


 いつもなら馬鹿話を始めるはずのアメリアは息をのんだ。あり得ない出来事続き。誠もただあきれるほかなかった。


「まあ、アタシも嘘であって欲しいよ。まあ、安心できるのは死者が出なかったってことだ。素人がフルオートでベルルカンじゃよくある銃の反動の強いカラシニコフをぶっ放すんだ。初弾以外は全部天井に当たるわな。まあその初弾も誰にも当たらなかったから出たけが人は、崩れた天井から落ちてきた破片が当たった軽症者だけだったそうな。そのテロリストもあの馬鹿の部下に瞬時に拘束された。だから大事というと大ごとだが別に大したことじゃねえ。その辺がアイツがラッキーな点だな」


 かなめはようやく一息つくとタバコを吸おうとしてここが近縁なのを思い出してやめた。


「それは安心だな……だが原因は何だ?そもそもそんな事件ベルルカンの南部では起きるはずがない」


 カウラはようやく落ち着いたようにそうつぶやいた。それがかなり不謹慎なものであることは分かっていたが、麗子の前ではそれが意味をなさないことは誠にもなんとなく察しられた。


「カウラちゃん。麗子の馬鹿と同レベルで安心してどうするのよ!で?かなめちゃん。なんでそんなことになったの?」


 あまりの内容に半分壊れて妙な納得の仕方をしているカウラをなだめるとアメリアはそう言ってかなめを見つめた。


「驚くのはこれからだぜ。まあ、そのイカレたテロリストを捕まええてゲロさせたら、ある日突然家に荷物が送られてきたんで開けてみたら銃だったと。しかも、そいつがたまたま自殺願望の持ち主で、多くの人を道連れにしたくて発砲したんだと……まったく迷惑な話だぜ。テロリストかと思ったらただのうつ病患者だったんだから。まったくボロの警察もあきれ果てて口もきけなかったそうだ」


 かなめも言ってることが馬鹿馬鹿しいのは重々承知している顔でそう言った。


「あのさあ、かなめちゃん。なんで……そんなもんがそんなもんを欲しがってる人の所に送られてくるの?偶然?出来過ぎてない?誰かが仕組んだんじゃないの?だってあの馬鹿、『将軍様』でしょ?命を狙うような人間はいくらでもいそうじゃない」


 アメリアは偶然にしては出来過ぎている事実に納得できないようにそう言った。


「甲武じゃ『征夷大将軍』には何の権限もねえ。だが、アイツは『右大臣』だから陸海軍の将軍クラスを決める権限がある。だけど、アイツは馬鹿だから全部OKしか出さないから誰にも恨みを買っていない。アイツを殺したいと思うえらいさんはたぶん一人もいないんじゃないかな。それより、アメリア、まだまだあるぜ。その荷物のルートをたどっていくと、ちゃんと空港のX線検査を通過してるんだ。まあ、送り主はベルルカンの失敗国家在住の武器商人だから、そこから武器が流れ出したってことは不思議な話じゃないんだが……そもそもその武器商人がなんで意味もなくポロなんて武器の規制の進んだ安全なところにどう考えても発見されると決まってる方法で銃を送ったのか……それは最後まで分からなくね。結局真相は闇の中だ」


 そう言ってほほ笑むかなめにアメリアとカウラは大きくため息をついた。


「さすがにこれだけの大ごとになれば、海軍からお荷物を押し付けられた陸軍だって堪忍袋の緒が切れる。かくして田安麗子中佐は流浪の旅に出ることになった」


 かなめの奇想天外な麗子の物語はまだまだ続きそうだった。誠はあくびをしながらそれに聞き入っていた。

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