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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十章 『征夷大将軍』対策会議

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第48話 ありえない事故と信じられないラッキー

「まあ海軍の偉いさんもオカルト信者じゃねえんだ。最初のうちは偶然だと思ってたさ。ただそれが延々二年間連続で起きるんだ。調査もしたが、すべてのトラブルに共通しているて点はアイツの乗艦と行動を共にしただけ。そうなってくるとさすがの海軍上層部も考えを改めなきゃならなくなるが……そんな時ついにとどめの事件が起きた」


 いかにも楽しそうにかなめはそう言うと誠達を見回した。誠達はどこかうれしそうなかなめを冷ややかな目で見つめていた。


「奴の乗艦『匝瑳』は遼州の大麗軌道上を警戒任務中だった。僚監は二隻。どちらもこれまでとは違い、まったくトラブルもない。疫病神の神通力もついに年貢の納め時が来たと狂喜していたそうだ。場所は遼州の月であるハンミンの領域。あそこは遼州同盟を最初に提唱したくらいの国だから許可さえとれば甲武の軍艦が普通に進行していても何の問題もねえ。その時もちゃんとハンミンの宇宙軍には領海侵入許可は取ってた。何一つ問題は起きねえはずだったんだ」


 誠はかなめの顔を見ながらかなめは実は怪談話をする才能があるのではないかというような余計なことを考えていた。


「遼州の月であるハンミンの軌道上か?あそこは遼州同盟を最初から提唱していた穏健で知られるハンミン国の領域だぞ。遼州圏でも東和共和国の領域と並んで安全極まりない場所だ。トラブルなんて起きようがない」


 吐き捨てるようにカウラはそう言った。それを見てかなめはにんまりと笑う。


「それが起きたんだな」


 そう言ってかなめは皮肉めいた笑みを浮かべた。


「嘘……何が起きたのよ」


 かなめの言葉と笑顔にアメリアが絶句する。


「後で分かったことだが、本当にそれは天文学的割合で起こる偶然だったんだ。外惑星から船が超空間転移して奴の艦隊の前に現れた。居住ポッドと最低限の宇宙航行装備、それにどこで手に入れたか分からない古い魚雷を三つ括り付けたおんぼろ船。典型的な宇宙海賊って奴だ」


 いかにも楽しそうにそう言ったかなめに誠達はあきれ果てていた。


「確かにそれはヤバそうな話だけど。最新駆逐艦とおんぼろ海賊船じゃあ勝負にはならないんじゃないの?」


 アメリアの口調は不服そうだった。四年前に遼州同盟機構が発足してからは宇宙海賊の被害は遼州内惑星圏では報告されていない。それほど治安の安定しているはずのハンミン国の宙域で事件が起こること自体が考えられない話だった。


「まあな。しかもその運の悪い海賊には度胸もなかった。ビビッてろくに照準もせずに魚雷をぶっ放したわけだ。普通ならそんなもん、明後日の方向に飛んでいくか対空砲火でドカンだが、そこでいつもの奴がらみのトラブルだ。三艦ともに対空砲火が不調。魚雷はそのまま『匝瑳』の艦橋に命中した」


 あまりに出来過ぎた事実に誠達は言葉も無かった。


「嘘だろ?」


 明らかにカウラはかなめの話を信じていなかった。誠も信じられないというように息をのむ。


「嘘も何も、甲武海軍の記録に残ってる。司法局の局員なら権限で閲覧可能だぜ。まあ艦が沈むほどでは無かったからニュースにはならなかったけどな。しかも、奴の乗艦『匝瑳』は無傷だった。なんでも魚雷の信管が壊れてたらしい」


 安心すればいいのか驚けばいいのか誠達はひたすら戸惑っていた。


「それはシャレにならないことで……まあ、魚雷の信管が壊れてたのは確かにラッキーとしか言えないわね」


 心の入っていない調子でアメリアはそう言った。



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