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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十章 『征夷大将軍』対策会議

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第40話 やっぱりサンマはかなめちゃんちに限る

「だが、西園寺。なんでそんなに田安中佐を嫌うんだ?その割にはきっちりGⅠの際には競馬に行った後にホテルで一緒に夜を過ごしている。矛盾しているとは思わないのか?」


 カウラは心底不思議そうにかなめに尋ねた。


「だから言ってるだろ?嫌いじゃなくて面倒なんだよ。まああいつの最大の特徴である馬鹿さ加減を知れば、オメエだってアタシと同じ気分になる。まず、アイツが自分でアタシの事をアタシに無断で『妻』と認定している時点でおかしいとオメエ等も考えねえのか?かえでを見てみろ。神前がいくら嫌がっても自称『許婚』の看板を下ろしゃしねえ。かえでもおかしいだろ?アイツも同レベルでおかしい。まあ、かえでは露出狂のマゾヒストだから麗子以上におかしいがな」


 そう言ってかなめは苛立ちながらそう吐き捨てた。


「馬鹿、馬鹿って言うけど。一応は海軍の士官。それなりの教育だって受けてるんでしょ?うちの部隊にはトップ・オブ・馬鹿のサラがいるじゃない」


 疑問に首をひねりながらアメリアが尋ねる。


 サラ・グリファン中尉はアメリアの部下に当たる運航部の隊員ある。島田の彼女であるサラは空気が読めず突拍子の無い行動で隊の一同から呆れられる存在だった。


「まあ……サラは馬鹿だが……麗子とは種類の違う馬鹿なんだよ。馬鹿という言葉は本来、麗子みたいな奴を指すのに最適な言葉だ。サラを指すには馬鹿という言葉の代わりに頭が悪いという言葉がある。これからはそっちを使え……というか、アメリア。オメエはこの東和に来た時、女流落語家の弟子になって前座修行をしてたよな?」


 かなめは突然話題を変えてアメリアに目を向けた。


「そうだけど、それとあの馬鹿が馬鹿なのと何か関係あるの?」


 突然話題を昔話にすり替えられて戸惑ったようにアメリアはそう返した。


「落語にはいろんな馬鹿殿、馬鹿姫の話が有る。アタシの家、西園寺家は『甲武の庶民文化の守り手』ともいわれるほど多くの落語家の前座や二つ目がアタシの実家の西園寺御所の敷地内にある長屋に住んでいる。だから当然アタシも落語には詳しい。オメエも知らねえわけもねえ。あの有名な落語『目黒のサンマ』の現場をアタシはこの目で見た」


 かなめはそう言って大きくため息をついた。


「そんなの……まあ、誠ちゃんやカウラちゃんは知らないかもしれないけど……でもその『現場を見た』ってどういうことよ」


 アメリアは問い詰めるようにかなめに迫った。


「まあな、甲武じゃ魚は獲れねえ。なんせ海が硫酸で出来てるからな。でも、東和でサンマが安く出回ると甲武でも東和で余った冷凍のサンマは大量に出回るんだ。庶民でも手が届く貴重な魚ということで人気があるが……麗子は馬鹿姫様だからそんなことも知らなかった」


 かなめはそう言って真剣な表情で周りを見回した。


「それがどう落語の『目黒のサンマ』と絡んでくるのよ?かなめちゃんが生まれて初めてあの馬鹿にサンマを食べさせたとでも言うの?そしてあの馬鹿が家で油抜きの不味いサンマを食べて『やっぱりサンマはかなめちゃんの家に限りますわね』とでも言ったとでも言うの?」


 アメリアはあきれ果てたようにそう言った。


「すげえな、アメリア。その通りだ。うちは代々、食い物は庶民の食うものを食うことにしている。だからアイツもその時期にたまたまアタシの家に遊びに来ていて晩飯にサンマを食ったわけだ。そしたらアイツの感動したことときたら……アイツは家ではタイとかヒラメとか高級魚しか食べたことがねえとか抜かしやがるんだ。それで普通に焼いたサンマを食わせたらタイやヒラメより旨いと言いやがる。そしてそのサンマの味が忘れられずに家に帰って家臣にサンマを食いたいといったらアメリアの言った通りのものが出てきた。そしてそれからはサンマの時期になるとあたしの実家に来てサンマを食わせろというようになった。これがアイツの馬鹿姫話の一つ。でもアイツは馬鹿だからそのやることなすこと落語の馬鹿殿、馬鹿姫エピソードはほぼすべてを網羅している。アイツの世間知らずには困らせられたもんだぜ」


 かなめは大きくため息をついて周りを見回した。


「かなめちゃんも苦労してるのね……今のがものすごく心に刺さった。確かにそんなのと付き合うのは私も御免だわ」


 かなめのため息にアメリアは同情の言葉を返した。誠とカウラはただ顔を見合わせる。



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