第37話 実はいたかなめの自称『夫』
「アメリア。まあ、麗子とはアタシは長い付き合いでな。それこそアタシが覚えてる限り、三つの時から一緒だ。それからのずっと『腐れ縁』。まあ、アタシは修学院女子の高等部を途中で除籍になって、高等予科学校に移ったからそれまでの付き合いにしたかった……が、それから後も勝手にアイツは着いてきやがった」
かなめはしぶしぶそう切り出した。
「幼馴染なんですか?それならなんでそんなに嫌がるんですか?」
アメリアににらまれながら嫌々結論を口にしたかなめに誠が声を掛けた。
「幼馴染なんて呼ぶんじゃねえ!『腐れ縁』だ!アイツはアタシの事を『妻』と呼ぶがそんなことはアタシは認めねえ!誰が『妻』だ!ベットの中ではほとんどアイツが『妻』じゃねえか!事実を曲げるな!いい加減にしろ!」
そう言うとかなめは再びタバコを取り出して口にくわえた。明らかに不機嫌そうなかなめの調子に誠は少し圧倒された。
「西園寺……貴様は今『ベッドの中』と言ったな?つまり貴様は妹の日野と同じようなことが好きな同性愛者だと認めた訳だ。その田安中佐は貴様を『妻』と呼ぶのか?甲武国では同性愛の女性当主には家名存続の為に女性の妻を迎えて子をなすことが認められている……つまり、貴様と田安中佐は結婚していると?じゃあ、そのまま田安中佐の妻として暮らせ。そうすれば貴様の攻撃的な性格もよくなるかもしれない。おめでとう」
カウラと明らかに感情のこもっていない祝福に一同は静まり返った。
「西園寺さんに旦那さんが居る……しかもそれは女の人……まあ、かえでさんを調教して完全な変態にするくらいだから西園寺さんに同性愛の気質が有ってもおかしくないけど……」
誠は混乱する脳内を整理するので精いっぱいだった。
「百合ね!これは立派な百合物語なのね……っていっても相手はあの馬鹿でしょ?かなめちゃん。ご愁傷さま。誠ちゃんの事は諦めてこれからは一生あの馬鹿な将軍様とお幸せに!一生そのまま二人っきりで幸せな夫婦生活を送ってね!私も生暖かい目で見守るから!」
アメリアは満面の笑みを浮かべて落ち込むかなめに止めを刺した。
「うるせえよ!オメエ等面白がってるだろ!だからアイツとアイツには絶対服従の『徳川譜代』の連中がそう騒いでるだけだ!アイツは所詮甲武四大公家第三位の当主だ。アタシは甲武四大公家筆頭の当主!そのアタシが認めてねえんだ!そんな約束は無効だ!それ以前にアイツがアタシを『妻』と呼ぶのはアイツの勝手な思い込みだ!それにベットの中ではアタシもアイツの『夫』の役割を果たすことが多い!一晩でアイツが『夫』であるのは一、二回だ!アタシは五回は『夫』をする!だからアイツはアタシの『妻』に……してやってもいいが、側室どまりだな」
かなめは必死になってそう言い張った。




