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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第九章 究極の無能『征夷大将軍』

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第33話 『アイツ』は女性でしかも……と嵯峨は言った

「ベルガー……元気だねえ……まあ、隠しといても時間の無駄だから言うわ。俺もあの馬鹿には迷惑している口だから。あんなのに『右大臣』の官位とか『征夷大将軍』なんていう称号を与えてる甲武もどうかしている」


 嵯峨はそれだけ言うと大きく咳ばらいをした。誠達は部屋の埃が落ち着いてきたことに気づいてそのまま四人で気を付けの姿勢をとる。


「ああ、やっぱ待って……」


 それだけ言うと嵯峨は椅子に腰かけた。タイミングを外された誠達は大きくため息をつく。


「簡単な仕事なんですよね?でも今日は七時半には帰れますか?アタシ、アニメガみたいんで」


 気を付けの姿勢のままアメリアがそう言い放った。


「アニメだ?」


 あきれ返ったようにカウラがそう言ってアメリアを見上げる。


「ええ、『魔法少女エミリアちゃん』。誠ちゃんも毎週見てるわよね?」


 開き直ったようにアメリアはそう言い放つ。古典落語から最新アニメまで。アメリアの興味の幅は誠をはるかに凌駕していた。


「ええ、僕も見てます。キャラデザインが参考になるので」


「神前まで!」


 アメリアの問いに答えて頭を掻く誠を見ながらカウラは頭を抱えた。


「ああ、そのアニメは諦めてくれや。夜は遅くなると思うぞ……別に仕事で遅くなるんじゃなくって馬鹿の機嫌を取るというより高度なお仕事だ」


 そう言うと嵯峨は覚悟を決めたように立ち上がった。


「隊長のケチ!」


 アメリアはそう言って誠を見つめる。その流し目で見つめられた誠はどぎまぎしながら苦笑いを浮かべた。


「でも夜が遅くなるってことは、時間のかかる作業なんですよね?機嫌を取る?なんでそんなつまらないことをしなければならないんですか?」


 カウラは素直に自分の質問を、質問をはぐらかすことの天才である嵯峨に向けた。


「ああ、大丈夫。あの馬鹿の意向は夜更かしは美容の大敵ってことで深夜にはならないはずだから。まあ……夜九時……遅くて十時かな?」


 嵯峨はそう言うと再び椅子に座ってしまった。


「隊長!美容の大敵っておっしゃいましたよね?それと馬鹿って言いましたよね?」


 思い切って誠は口を開いた。


「おう、おっしゃったよ……美容の大敵って。言った、言った。ついでに馬鹿って言った。それは本人には言わないでね。馬鹿に馬鹿って言うのは失礼なことだから」


 嵯峨は誠の言葉に一瞬驚いたような表情を浮かべた後、すぐにいつもの不敵な笑みを浮かべて机の上に頬杖をついた。


「つまり。僕達とある女性を会わせたいってことですか?しかも馬鹿な。」


 誠は真面目な顔でそう言った。


「ほう……確かにな。俺も自分の言うことを頭の中で反芻するとそういう結論がでるってのも考えの一つだと思うぞ……神前。多少は推理ってのが出来るようになったな。そうだ、お前さん達が世話するのは女の人。しかも馬鹿」


「へへへ……」


 感心したようにつぶやく嵯峨を見て誠は照れ笑いを浮かべた。


「女性で、隊長とかなめさんがこんなに嫌がる人……やっぱり康子様?でも変よね。お母さん大好きなかえでちゃんがこの場に呼ばれていない。しかも『甲武の鬼姫』と呼ばれて、隊長も怖がっているあの人を隊長が馬鹿呼ばわりできるわけがない」


 ひとしきり考えたというようにアメリアがそう言った。その言葉を聞いたそれまで無表情だったかなめがふたたびうなだれる。


「お袋?馬鹿言うなよ。そんなバケモンが来るんならそもそもアタシは出勤なんぞ拒否してる!」


 かなめはそれだけ言うと大きくため息をついた。


「そうだな。康子様のはずがない。もしそうだったら西園寺はここにいない。一階の武器庫に飛び込んで全身に武装してブルブル震えているはずだ」


 カウラはそう言ってうなだれるかなめを見つめてほほ笑んだ。


「おう、俺もその仲間に加勢するね。いや、うちの武器庫の兵器じゃ足りねえや。遼北か西モスレムにでも乗り込んで核ミサイルを二つ三つ強奪してから籠城するね。まあ、あの女傑はその程度の防衛網なら突破しかねねえぞ」


 嵯峨は投げやりにそう言って首をすくめた。


 康子様こと、西園寺康子はかなめの母である。世間一般では遼州同盟の有力国、第二惑星甲武を領有する甲武国宰相西園寺義基の妻、ファーストレディーとして知られていたが、司法局実働部隊では部隊長の嵯峨惟基を恐れさせる謎の存在と認識されていた。


 誠も嵯峨やかなめ、そして何より康子を慕うかえでの携帯端末の画像で西園寺康子の姿を見ていたが、嵯峨やかなめがこんなにも彼女を恐れる理由は理解できなかった。誠から見れば、康子は赤い着物の似合うどこかかなめに似た美魔女でしかなかった。

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