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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第九章 究極の無能『征夷大将軍』

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第30話 怖いものなしのサイボーグが恐れる『アイツ』

 かなめはうなだれて動こうとしない。その固まったような笑顔に誠は少し違和感を感じた。


「西園寺さん……さっきから『アイツ』って言ってますけど誰です?西園寺さんのいつも怖がってるお母さんじゃないですよね?西園寺さんのお母さんが来るのならかえでさんが非番な訳が無いですから。それにお母さんを尊敬しているらしいかえでさんは特に奇妙な様子もなかったですし……なんなんです?」


 誠は心配のあまりかなめの顔を覗き込む。かなめの赤外線すら見える人工の瞳にはいつもの光が無かった。


 かなめは目を見開いて、口を半開きにしていた。その口元にひきつり笑いを浮かべているだけでなく、こめかみがひくひく動いているのが見える。


「変なかなめちゃん……まあ、いつも変なんだけど今日は特別にへんよ。誰よ『アイツ』って」


 アメリアはそれだけ言って、ドアのところで誠達を待っているカウラの元へ急いだ。


「西園寺さん……」


 明らかに混乱状態に陥っているかなめを見つめて誠はそう言った。


「嘘だ……嘘であってくれ……確かに『アイツ』にはここに来る理由はある。だから来る……でもそれは避けたい……それだけは避けたい」


 心配する誠をよそに、かなめは独り言を口走っている。その表情はあまりに深刻で誠の不安を書き立てた。


「誠ちゃん。変なのは置いといて隊長室に行くわよ!かなめちゃんは『アイツ』については触れたくないんでしょ?そっとしておいてあげましょうよ。どうせ逃げ場はないんだから」


 入口にたどり着いたアメリアが誠を呼んだ。


「でも……西園寺さんが……」


 立ち尽くして呆然自失としているかなめを気遣いながら誠はそう言った。


「いや、神前。アタシも行く。これも任務だ。仕事を選ぶようなことはアタシはしない……『アイツ』ももしかしたら少しはマシになってるかもしれねえし」


 ようやく意を決したように顔を上げたかなめは、そう言ってしっかりとした足取りでアメリア達に向かって歩き出した。


「大丈夫?かなめちゃん」


 廊下まで着実な足取りを続けていたかなめが、そうアメリアに声を掛けられると再びうつむいた。


「やっぱ駄目だ!カウラ……アタシだけ逃げるってのは……」


 またかなめは逡巡したように立ち止まった。


「西園寺。隊長命令を聞くだけのことでなんでそんなに落ち込むんだ?それに『アイツ』って誰だ?いい加減教えてくれないか?」


 カウラがそう言ってかなめに説教を始めようとするのを見て、アメリアがカウラの袖を引っ張った。


「ぐちゃぐちゃ言っても仕方ないわよ!隊長室に行くぐらい誰にでもできるじゃないの!」


 そう言って満面の笑みを浮かべたアメリアは先頭を元気よく歩く。


「西園寺……」


 カウラも小隊長として明らかにいつもと違うかなめの態度が気になっているようだった。


「仕方ないか……『アイツ』にも学習能力はある!それに『アイツ』も仕事でくるんだ!無茶はしねえだろう!」


 顔を上げたかなめは、あきらめ切った表情で歩き出した。


 取り残された誠とカウラは顔を見合わせると、我に返って二人の後を追った。


 機動部隊執務室と隊長室は二十メートル程度しか離れていない。否が応でも誠達はその隊で唯一の木目の立派な扉の前にたどり着く。


「それじゃあ入るぞ」


 そう言ってカウラはノックをしようと手を伸ばすがその手をかなめが抑えた。


「何をする!西園寺!」


 カウラの手を抑えたかなめの顔には絶望の表情が浮かんでいた。



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