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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第八章 すべてを誠達に押し付ける『人類最強』幼女

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第27話 かなめの不機嫌

 司法局実働部隊機動部隊と言えば、巨大ロボット『シュツルム・パンツァー』を運用する司法局の実力部隊の花形である。並んで着替えをする他の技術部の整備担当の男子隊員に比べて明らかに体格がよく、誠の表情は自信に満ちていた。


 誠がネクタイを締め終わったとき、更衣室のドアを激しく叩く音が聞こえて、部屋中の男子隊員達が視線をドアに一瞥した後、一斉に誠に視線を向けた。


「神前曹長……なんとかしてくださいよ……」


「……ったく、いつものことながら……迷惑なんですよ」


 隊員達は誠に恨み言をこぼした後、ゆっくりとドアから遠ざかる。誠は既視感にとらわれながら苦笑いを浮かべた。


 ドアをたたく音は続いている。それは収まるどころか、次第に激しさを増していく。


 苦笑いを浮かべて立ち尽くす誠に向けて、整備班の隊員達は怨嗟の視線を送る。渋々誠はドアを開けて表に出た。


「……んだよ!いつまで着替えてんだよ!女を待たせるなんて最低だぞ!」


 おかっぱ頭のたれ目の美女が誠を怒鳴りつけた。


 彼女は誠と同じ機動部隊第二小隊二番機担当である。黙って苦笑いを浮かべて立ち尽くす誠を見上げながら明らかに不機嫌に叫んだ。


 男子更衣室の一同は怒っている目の前の美女、西園寺かなめの顔よりその左脇に目を向けた。


 そこには銃がぶら下がっている。軍事警察機構である『特殊な部隊』とは言え、平時から銃を持ち歩いているのはかなめ一人である。


 彼女は愛銃『スプリングフィールとXDM40』を日常的に持ち歩いている。私服だろうが外出だろうが明らかに見せつけるように左脇にブラウンの革製のホルスターを吊り下げて暮らしていた。


『そんなの護身用だ。一応、国じゃあVIPだからな』


 それがかなめの言い分だったが、一応許可は取ってあるとはいえ、かなめの千要駅前での路上ライブのサクラに駆り出されるたびに県警の巡回の警察官からされる職務質問とその後のごたごたを経験している誠から言わせれば逆に銃を所持しているからこそ起きる問題の方がはるかに多かった。


「かなめちゃん。毎回こんなに叩いていたら、またこの扉壊れるわよ」


 かなめの肩を叩きながら隣に立っていた185cmの誠と遜色ない長身の紺色の長い髪の女性がそう言った。


 アメリア・クラウゼ少佐。彼女の所属は実働部隊の運用艦『ふさ』の運行を担当する運航部部長の職にあった。彼女は外惑星の軍事国家『ゲルパルト第四帝国』で製造された人造人間『ラストバタリオン』であるが、そんな人工的な感じはみじんも感じさせず、ただの普通の背の高いお姉さんと言った感じだと誠は思っていた。


「扉の心配より、中で着替えている連中の心配をするべきだな。このままじゃずっと、狭い更衣室に缶詰めだ……それにこの隙間風。風邪をひくぞ」


 二人の後ろからそう言いながらため息をつくのはカウラ・ベルガー大尉。機動部隊第二小隊長。誠とかなめの上司である。彼女もまた人造人間ラストバタリオンでアメリアよりは幾分表情に硬さがあるので人造人間らしく見えた。


「いいんだよ!こんな臭い部屋、永遠に封印してろ!どうせ今日はこいつ等もアイツのせいで迷惑をこうむるんだ。全員今日が厄日であることを再確認しろ!」


 のしのしと大股で廊下を歩きだしてそう言い捨てるかなめに三人は大きくため息をつく。


「また無茶苦茶を……それと何度も言うが『アイツ』って誰なんだ?そんなに言いたくないほどひどい人間なのか?まあ貴様の友人にまともな人間性を期待する方がどうかしているがな」


 自分の長いエメラルドグリーンのポニーテールをかき上げると、カウラは呆れれながらもかなめの後ろに続いた。


「まことちゃん!行くわよ!置いていくとアタシが作った誠ちゃん印の女性用大人のおもちゃを路上販売するわよ!」


 立ち尽くしている誠に一声かけてアメリアがカウラの後ろに続いた。誠は笑いの為なら大人のおもちゃの路上販売くらいやりかねない性格のアメリアの事を思い出して、ようやく去った災難に安心した更衣室の整備班員達に見送られて誠はかなめの後ろに続いた。


「待ってくださいよ!それとそんなもの路上販売しないでくださいね!本当に警察のお世話になることになりますよ!」


 我に返った誠は三人の後を追って、隊舎の二階の廊下を走った。



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