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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第七章 『女王様』の異変

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第24話 久しぶりのスポーツカー

「神前が私の車に乗るのも久しぶりだな。どうだ?乗り心地は。走りではこちらの方が上なんだ。走って楽しい車が一番いい車だ。良い物だろ?」


 愛車、『スカイラインGTR』のハンドルを握るカウラの頬にはうっすらと笑みが浮かんでいた。


「かえでちゃんの車と比べると乗り心地悪くない?ちょっとした段差でお尻が痛くなるし。その点あっちは高級車だけあって乗り心地だけは良いのよね。それにカウラちゃんの運転ってリンちゃんのに比べると少し乱暴でしょ?その辺気にならないの?また『もんじゃ焼き製造マシン』体質をぶり返さないでね……誠ちゃんは油断するとすぐ吐くから。そこだけは何とか直してもらいたいんだけど」


 後部座席で誠の隣に座るアメリアはそう言うと誠にいつもの糸目を向けてきた。


「確かにかえでさんの車は乗り心地がいいですけど、あのふわふわした感覚がどうも慣れなくって……むしろサスペンションが堅いカウラさんの車の方が僕にはあってます」


 誠は正直な感想を口にした。


「そうか、それならいい。それに昨日の『愛の手紙』はかなり気に入ってくれたみたいだな。私を見る目がいつもと少し違う。何となく嬉しい」


 カウラはそう言って頬を赤らめた。ただ、そう言う時点で人として間違っていると誠はため息をついた。


 カウラの送ってくる無修正動画『愛の手紙』の内容は日々過激になっていた。これまで誠が持っていたカウラの堅いイメージが崩れるのは良いのだが、その純粋なイメージが覆されていくのは少し残念だが男の本能がそれを望んでいた。


「けっ!結局はカウラも慰安用戦闘用人造人間だってことだ。その本能が目覚めたんだろ?そんなに神前に媚びるのが気持ちいいか?だろうな、『ラスト・バタリオン』は初めての時から男を喜ばせることの為だけに腰を振るように作られてるからな。その快感に酔いしれてアタシに調教されてそうなったかえでと同類になる。そのうちこいつも全裸徘徊とかはじめるんじゃねえの?」


 かなめは棘のある口調でそう言った。きょうのかなめは一切笑わない。普段は一番ひどい下ネタに走り自爆して真っ赤になるようなギャグ展開を見せるかなめにそんな隙が一切ない。それが誠には気になるところだった。


 そこから導き出されるのは今日のかなめはいつも以上に不機嫌であること。それには何か特別な理由があるのだろうということ。そしてそれがおそらく自分の身にもダメージを与えることになること。そのことを思うと久しぶりに誠は胃のあたりに違和感を感じ始めた。


「そう言えば、今日の西園寺さんは結構朝からきつかったですね?そんなにリンさんの夜這いが頭に来たんですか?昨日は発砲までしたらしいじゃないですか?どこまで過激化すれば気が済むんですか?まあ、リンさんもリンさんですけど」


 誠は毎晩自分のベッドにリンがもぐりこんでくる日常に慣れ始めていたのでそう言って様子を伺ってみた。


「あの女、いつの間にか神前から出る白い液体のおかげで『干渉空間』を展開できるようになっていやがった。昨日も3発撃ち込んだが全部弾かれた。下手したら今の神前よりリンの『干渉空間』の方が強力なんじゃねえのか?おめえ、リンより弱くなったら機動部隊最弱のパイロット認定されるぞ。そうなりたくねえだろ?だったらクバルカの姐御じゃねえがもっと鍛えろ!」


 かなめはいらいらした調子でそうつぶやく。


 かなめの愛銃スプリングフィールドXDM40の弾は普通の弾丸では無い。力のない法術師の展開する防御壁である『干渉空間』程度なら簡単にぶち抜くことが出来る対法術師用の特別製の弾丸を使用している。誠の『干渉空間』はその防御がギリギリ行える程度でかなめが言ったように3発もそんな弾を食らえば一発くらい貫通する可能性がある。それを弾くということはリンはすでに誠が覚醒した時の実力を遥かに凌駕する法術師になっているということになる。その原因が熟睡していたところをリンに精液を採取されたからだというあまりに間抜けすぎるのが誠には確かに気に入らなかったが。

 

「やっぱりひよこさんが言うように地球人の女性の子宮に法術師の精液が大量に付着するとその法術師の能力をその女性が得ることになるんですね……でも、西園寺さんが言う通りなら下手したらリンさん僕より強いかもしれませんよ……というか、『近藤事件』の時の僕なんかより今のリンさんの方がはるかに強いです」


 誠は少し危機感を持ちながらそんなことをつぶやいていた。確かに自分にはあの頃のような法術を発動するたびに全精神力を持って行かれるような弱さはない。連続的な法術発動も簡単にこなすことが出来る。それでもかえでや『人類最強』の機動部隊長のクバルカ・ラン中佐にはまだ訓練では手を抜かれて子ども扱いされている。その事実に誠は久しぶりに悔しさを感じていた。

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