第217話 腹黒人造人間は全ての反撃をことごとく退けた
「おい、リン。聞いてりゃ図に乗りやがって。何が『駄目女』だ?カウラやかえでやアメリアは確かに『駄目女』だが、アタシは違うんだ。渡辺家の別家?確かに武家は『征夷大将軍』である麗子の管轄下だが官位のやり取りは『関白』であるアタシの専権事項だ。なんならオメエの『弾正尹』の位も取り上げるぞ?それに所領もだ!」
いち早く立ち直ったかなめはムキになった顔でそう言ってリンをにらみつけた。
「かなめ様。無用に官位を弄ればなったばかりの立場の弱い『関白』の地位を傷つけることになりますよ……それこそ自殺行為ですね。それに誠様はこの案はあまりお気に召さない御様子。つまり、その際は私は東和国民になるわけですからかなめ様がいくら吠えようと何の手出しもできません……違いますか?」
明らかにかなめが言って来るだろう無茶に対応する返しを用意していたように冷静にリンはそう返した。
「リン、君に家宰を辞められると僕としては困るんだよ。君ほどの人材は中々いない……考え直してくれないかな?」
いつもの自信はどこへやら少しへりくだった調子でかえではリンにそう言った。
「かえで様。いただいた恩は一生かかっても返せるものではありませんが、誠様への思いもまた私にとっては変えがたいものです。そもそもそんな思いを抱かせるきっかけになった誠様のアレの大きさと精液の採取をお命じになられたのはかえで様では無いですか?つまりはこんな思いを私に抱かせるきっかけを作ってくださったのはかえで様です。ですので、誠様と幸せな家庭を築くことこそかえで様への真の恩返し……私の代わりならたぶんまだあのような甲武でも危険視されるほどひどい岡場所には密輸された私と同じ境遇の『ラスト・バタリオン』が少なからずいると思いますのでそちらをお探しになってはいかがでしょうか?」
リンはかえでに対しても容赦なく切って捨てた。
「渡辺、貴様が計画性があるのは良く分かった。確かにその面では私は貴様の足下にも及ばない。しかし、神前に対する思いだけは貴様に負けるつもりはない!」
今度は明らかにいつもの無表情をかなぐり捨てて感情的になったカウラがリンの前に立ちはだかった。
「感情論では人は動きませんよ。東和は資本主義体制の国です。経済感覚が無くて行き詰まって破産するのが目に見えている女と付き合いたいと思う人間がどれだけいるか……純潔だけが自慢の自己破産予備軍に誠様の人生を駄目にさせるほど私は甘い女ではありません。自己破産をすれば公務員は自動的に失職します。それは常識ですよ?これはクラウゼ中佐にも同じことが言えますね。あなた方お二人、本当にご自分が軍や警察以外が務まるとお思いで?何か役に立つ資格はお持ちですか?ベルガー大尉のパイロット資格。これは民間だとかなりのレアのように見えてそもそも需要が少ないから再就職は狭き門ですね。クラウゼ中佐の大型艦運用免許……タンカーの艦長希望者は確かに少ないですが、そうなると誠様はその間ずっと一人でお過ごしになることになる。そんな寂しい思いを誠様にさせて楽しいですか?どうです?お二人とも」
リンは自分に食って掛かるカウラだけではなく順番待ちをしていたアメリアまでも撃沈した。
もはやリンには敵はいない。そんな雰囲気が機動部隊の詰め所には漂っていた。




