第215話 理論ですべての恋のライバルを駆逐する女
「じゃあ、リン。僕はどうなのかな?君は僕に比べると女性としての『華』に欠けるね。そして、君には誠君を良く導くだけの理論は有るかも知れないがそれを実行に移す実力がない。僕は少佐だ。佐官と尉官と言うのは小さい差のように見えてその権限にはかなりの大きな開きがあるのはリンも知っての通りだ。そして、僕には幅広い人脈がある。この交友関係の広さはどちらかというと部屋に閉じこもってばかりの誠君には必要なものなのではないかな?」
かえではリンの参入は予想の範囲内とでもいうように勝利を確信してそう言って見せた。
「かえで様。さすが我が主君だけあってなかなか的確な指摘をしますね。ですが、それが逆に墓穴を掘っていることに気付かないところがそばに使えてきた私の正直な感想です。まず、女性としての『華』と申しますが、それはかえで様の男女を問わない浮気癖を肯定するための言い訳としてこれまで何度も使用されてきた言葉ですよね?誠様は一途な方です。ですので、かえで様の浮気癖を合理化するための論理はあまり誠様の心証を良くするようには到底思えません。これは階級に関する言及、交友関係に関する言及に関しても同様です。それゆえに浮気をしても許される。それゆえに変態行為に走っても許される。それはかえで様の誠様に対する甘えとしか私には理解できませんがいかがでしょうか?」
理路整然と自分の長所がすべて短所に過ぎないと指摘されてしまえばかえでも黙り込むしかなかった。
「ああ、クラウゼ中佐。あなたは言うまでも有りませんね。誠様と趣味が合う。でも私も誠様の趣味を調べて色々と研究し、誠様の妻となるべくライバルであるクラウゼ中佐を追い落とす計画を練るうちにあることに気付きました。似た趣味の人間ほど些細な違いで喧嘩をすることが多い。確かにクラウゼ中佐と誠様のアニメの趣味、エロゲの趣味は似てはいます。しかし、よく研究していくとその違いは明確です。クラウゼ中佐はどちらかというと笑いの多い展開の物を好む傾向がある。でも、誠様には笑いは添え物で物語そのものに深みのあるものを好む傾向にある。この微妙な違いが後々同族憎み合う展開へと発展する……オタク業界と関連の長いクラウゼ中佐は良くこの手の破局話を聞いたことが有るのではないですか?その点、私はあまりアニメにもエロゲにも関心は無いので新鮮に楽しむことが出来ました。誠様のようなオタクならこういう新鮮な反応を楽しみにしている。クラウゼ中佐。この事実も中佐ほどのその手の事に造詣の深い方ならお分かりになりますよね?」
自分が口を開こうとした瞬間にリンはアメリアの先手を打ってアメリアの言いたいことをすべて言い、そしてそれを全否定して見せた。
がっくりとうなだれる、カウラ、かなめ、かえで、アメリア。勝者となったリンはここで初めて笑顔を浮かべ、ただ一人リンの言うことを一切理解できずに呆然と立ち尽くしていたランに向けて真正面から向き直った。




