第214話 『最上の嫁』……彼女は物静かに様子を伺っていた
「貴様等には自分が『社会の敵』であるという自覚は無いのか?まず、西園寺。その銃をなんとかしろ。そんなものをいつでも振り回しては神前に銃口を突き付けている時点で貴様に愛を語る資格はない。つぎに日野。貴様の日常的にやっている行為は神前に対するセクハラだ。そして、貴様の趣味である露出徘徊は立派なわいせつ物陳列罪という犯罪行為だ。神前を犯罪者にするわけにはいかない。それとアメリア。貴様も自分は犯罪行為はしていないというが、貴様は神前を『面白いから』という理由だけでネットオークションに出品した前科のある女だ。そんな愛する者を売りに出すような女に神前を渡す訳にはいかない!」
カウラは強い口調でかなめ達をこき下ろした。
「そうですね、この方たちは犯罪者……あるいは誠様をおもちゃとして楽しむことしか考えていません。その点では、ベルガー大尉。私も同意見です。ただ、ベルガー大尉が誠様と結婚するとして、その生活をどのように営んでいくか……そこまでのお考えはベルガー大尉には有りますか?不肖、この渡辺リン。その全身全霊にかけまして夫としての誠様をお支えする覚悟もそのスキルも有ります。ベルガー大尉は料理が作れないそうですね?私には作れます。ベルガー大尉は『パチンコ依存症』ばかりではなく愛車の『スカイラインGTR』の部品を後先考えずに買う癖があるとも聞きました。つまり経済観念ゼロということですね?私は甲武四大公家日野家の家宰としてそのすべての財政を預かって来たという実績があります。それ以前に初めて同士の性交というものは決して幸せなものでは無いと聞きますよ。その点でも誠様はリンにすべてをお任せいただければいいのです」
そう言って割り込んで来たのはそれまで沈黙を守っていたリンだった。
「確かにベルガー大尉という誠様の選択は私もこの中の女性の中ではよい選択であると思いますよ。ですが、最良のものかと聞かれると私は違うのではないかと思ってしまいます。誠様をお慕いするこの女性陣の中で誠様が誰を選ぶのが最良か?その結論は最初から出ているのですよ。ここに居る皆様方。私に自分が勝っているという点を言ってみてください。それがいかに取るに足らないつまらないものかということをこのリンが証明して差し上げます」
リンはいつもの無表情でそう言うのだが誠から見てもその瞳には自信がみなぎっていた。
「おう、渡辺。デカいことを言うじゃねえか。まず、アタシは『関白』だ。四大公家筆頭だ。そして胸もおめえよりデカい。まあ、エロい事のテクニックは互角ぐらいにしておいてやろう。そして何より銃器の扱いに関しては神前をより高みへと導ける存在だ。そのどこが『取るに足らない』んだ?」
まず最初にリンに食いついたのが予想通り気の短いかなめだった。
「かなめ様。ここは東和共和国です。身分などと言う物を持ち出した時点で論外です。胸ですか?私は誠様のお好みとあらばいくらでも豊乳手術を施す覚悟が出来ております。それ以前にかなめ姫の胸もサイボーグの人工の胸ではないですか?話になりませんね。そして銃器の扱いですが、誠様は法術師です。誠様の干渉空間と『光の剣』は私も誠様のおかげで使うことが出来るようになりました。ですから、火力に長けた誠様の力と私の知力を用いた法術を利用した応用攻撃能力がある限りそのような無粋なものは不要です。私の言葉に何か不明点でもおありになりますか?」
リンは相変わらず表情一つ変えずにかなめを見つめた。かなめもあまりに理路整然と自分の長所を完全否定して見せたリンの前に言葉を失っていた。




