第213話 『モテ期』それは遼州人の誠には恐怖でしかなかった
「ベルガー、その目を見りゃ―色ごとに疎いアタシにでも分かる。オメーは真剣だな。その本気、アタシは嫌いじゃねーな。おい、神前。オメーはどーなんだ?ここはオメーの気持ち一つだ。アタシは野暮なことは言わねー主義でね」
ランはちっちゃな背で背伸びして女性としては長身なカウラの肩に手を伸ばした。
「僕ですか?僕は……カウラさんの事は……」
そこまで誠が言いかけた時にかえでとリンが鬼の形相で誠に向って歩み寄ってきた。
「そんなことは僕は認めないよ。僕は誠君の『許婚』なんだ!その事実は誰にも変えられない!たとえ上官命令とあってもそんな事は許されない!そして僕にとっては誠君の代わりになる存在なんてほかに居ないのだから!」
かえでの珍しく冷静を欠いた態度に誠は動揺した。かえでの瞳から流れる涙。誠はかえでが性的興奮以外で涙を流す様を始めてみた。
「日野。貴様は神前を『モノ』としてしか見ていない。貴様の愛は要するに貴様の貴族趣味と同じく単なる趣味の領域だ。そんなものに神前を巻き込まないでもらえないかな?」
カウラは冷たくかえでに向けてそう言い放った。
二人の間のにらみ合いが始まった。二人ともその瞳はうるみどちらも譲る気配はない。
「おう、良かったじゃねえか。神前モテ期だぜ……とのんびり言いてえところだが。この勝負にはアタシも加えてもらうつもりだ。カウラの『純愛』?見てて胸糞悪くなる。『許婚』だ?そんなのアタシは認めた覚えはねえ。この隊に神前が配属されたその瞬間から神前はアタシのものになる運命だったんだ。今やアタシは『関白』だ。当然その運命を合理化できる権力を持っているし神前を幸せにできる財力もある。なあ、神前。当然アタシを選ぶよな。大丈夫だ、オメエが心配しているような痛い事はしねえから。オメエもカウラの『パチンコ依存症』は心配だろ?それがあるから躊躇してたんだろ?じゃあアタシが調教をしねえと言えば条件は同じだ。そうなりゃアタシの方がぺったん胸で面白みのかけらもねえ仕事人間のカウラよりよっぽど楽しい人生が送れるぜ」
その間に割って入ったのはいつの間にか隣に立っていたかなめだった。かなめは自信ありげににらみあう二人を見つめて余裕の表情を浮かべている。
「本当にそうかしら?カウラちゃんの『依存症』、かえでちゃんの『露出癖』、かなめちゃんの『嗜虐志向』。そう簡単には治らないと思うけどなあ……隊長も言ってたじゃない。愛なんて一時的な病気なのよ。その病気が発症している間は三人の『社会不適合』行動は収まってるかもしれないけど、それが冷めた時どんな人生が誠ちゃんを待ってるのかしら?その点、私の『社会不適合』は誠ちゃんの考え方にぴったり合う壊れっぷりだから愛が冷めても趣味と話題でいつも一緒の楽しい生活を送れるのよ。もしかしたらそれが真実の永遠の愛かも知れないわね」
なぜか機動部隊の詰め所に居たアメリアまでもがこのいさかいに参加してくる。
『モテ期って……こう言う物なのか?どう見てもおかしな人たちが僕をおかしな方向に導こうとしているだけのようにしか感じないんだけど……嬉しいより恐怖が先に立つ……そんな純愛系エロゲ見たことが無いぞ』
誠は自分が望んでいた『モテ期』がこのようなものでは無いということだけは理解していた。




