第212話 仲人は8歳女児
「これはこれは、ベルガー大尉。真剣な顔をして僕の『許婚』である誠君の手を引いて……何が有ったのかな?』
機動部隊の詰め所に入ったカウラと誠を待ち構えていたのはかえでだった。腕をその巨大な胸の前に組み明らかに挑戦的な視線をかえではカウラに投げる。
「典型的な『社会不適合者』である日野に話すべきことではない。私が用が有るのはクバルカ中佐だ」
自分の前に立ちはだかるかえでを避けるとカウラはそのままいつものように新聞の名人戦の棋譜を見ているランの前に立った。
「クバルカ中佐!」
カウラは激しい口調でちっちゃなランに声をかけた。
「なんだよ、アタシが今何をしてるか見えねーのか?今回の名人戦は結構な名勝負なんだ。今回の封じ手……これが何かで歴史が変わる。それを読んでるところなんだから声をかけるんじゃねー」
ランは明らかに不機嫌そうにそう言って新聞から目を離そうとしない。
「そんな事より私と神前の人生の歴史を変える許可をいただきたいんです!」
カウラは強い調子でそう言うとランが手にしている新聞を取り上げた。
「ベルガーなにすんだ!まったく……『ハエ人間』の分際で随分とデカい態度を取るじゃねーか。そこまでやるんだ。つまらねー話だったらただじゃ済まねーからな。言ってみろ、その歴史を変える許可って奴を」
ランはとても8歳女児が浮かべるものとは思えない老成した笑みを浮かべてカウラを見上げた。
「私と神前は結婚します。クバルカ中佐には仲人をお願いします」
カウラはきっぱりとそう言った。ランは一瞬驚いたような顔をした後、すぐに真面目な顔に戻ってカウラを見つめた。
「あのなー、ベルガーよ。仲人ってのは大概夫婦でやるもんだ。アタシは一人もんのヤクザもんだ。そんなのに仲人をやる資格はねえ。でもまあ……ベルガーか。確かに、オメーならアタシの神前の嫁の眼鏡にかかるところにかなり近いのは確かだ。オメーの欠点である『ギャンブル依存症』さえなければ合格点と言って良い」
ランは不敵な笑みを浮かべてカウラを見上げた。
「そのようなものは神前への私の『愛の力』で乗り越えて見せます!地球人達は『愛の力』にそのようなものがあると信じていると聞きます!私も努力します!ですので……」
そこまで行ったところでランは右手を上げてカウラの言葉を封じた。
「おいおいおい、随分と『愛』とやらを信じているようじゃねーか。オメーは。あれは地球人の専売特許だろ?ああ、ベルガーは『ラスト・バタリオン』だから地球人の血は引いてる訳か……ならアタシのような遼州人からはどう聞いてもとち狂った発言をしてもおかしく無いわけだ。納得した」
ランは一人うなずくと立ち上がりカウラの隣に立った。




