第210話 嫌がる男ほど脈があると『駄目人間』は言った
「カウラさん!無茶言うのは止めてください!それと隊長も無責任ですよ!それになんで使用可能な人間の中に意地でも男であるアンを入れようとするんですか!僕はそう言う趣味が無いっていつも言ってるじゃないですか!」
誠はようやく平静を取り戻して嵯峨に向けてそう言った。
「いいじゃん、でもこれでベルガーがお前さんを愛しているらしいことが分かった。モテてるじゃん。全部俺の無茶振りのおかげじゃん。なんで怒るの?それとだ、アンがお前さんに執着する理由。そしてお前さん以上のイケメンの俺にアイツが何の関心も示さない理由。知りたくない?」
嵯峨は完全に誠をからかう気満々でそう言った。しかし、誠はアンとのボーイズラブ展開だけは避けたいと思っていたので嵯峨の誠を見下すような口調を無視することが出来なかった。
「なんでですか?確かに隊長はお蔦さんが来るようになって、安城少佐や月島屋の女将とも付き合うようになっからはそれまでのぼろみたいな私服から結構いい服を着るようになってまるでホストなんじゃないかなあと思うほどになりましたけど、それとアンが隊長に絡まない理由と関係が有るんですか?」
誠は不服そうに嵯峨に向けてそう言った。
「それはあるんだな、これが。俺は東和に来て1年で司法試験に通って研修を終えるとすぐに風俗街で弁護士事務所を始めた。狙いがそっち系のお姉ちゃんだったことは否定しないよ。そして、その中にはアンみたいな『男の娘』のお客さんもいた訳だ。その中でも永久脱毛と豊乳手術をしているだけという割にどう見てもグラビアクイーンにしか見えないような美女……っていうか股間には俺や神前に付いてるのが有るんだから女じゃないよね、そんな人もいたの。で、その人とは非常に仲良くなった。今でも時々連絡してるよ。でもアンがお前さんに望んでいるような関係には一切ならなかった。この秘密、このお姉ちゃんと呼べばいいのかあんちゃんと呼べばいいのか分からない人から教えてもらったんだ」
嵯峨は遠い目をするように天井を見ながらタバコの煙を噴き上げた。
「その人が言うにはね。自分を美女だと勘違いしてナンパをしてくる男は結構いる。で、それについていくと股間に付いているものの反応でそのナンパした男が脈があるかそうでないかすぐに分かるって言うんだよ」
そんな嵯峨の言葉に誠は興味を引かれた。
「まず、そのまま何もせずに無反応で踵を返して帰る人。つまり、俺みたいなタイプ。これは脈が無い男なんだそうだ。それは完全なるノンケ。完全なる女好き。こう言うのには労力を使うだけ無駄。それがその人の数百人を研究した結果だそうだ。そして、それの物を見て大げさに騒ぎ立てるタイプ。つまりお前さんみたいなタイプだね。それはもしその男がタイプの男だったらなんとか連絡先をゲットしてしつこくアタックすれば必ず落ちるとその人は言うんだよ。つまり、お前さんのアンに対してしている明らかに誰の目にも分かる拒絶反応。これをアンがどう受け取っているか……アンは間違いなくお前さんを『脈あり』と判断している。だから、お前さんはこれからも狙われ続ける……頑張ってね。ベルガーとお幸せに……ああ、アンにも気を付けてね」
そう言う嵯峨にとって誠の境遇は完全に他人事だった。




