第209話 社会の枠に収まる女が三人しかいないという『特殊な部隊』の現実
「そんなアンみたいな『男の娘』の戦闘マシーンの話はどうでも良いんだよ。それと叔父貴、なんでどさくさ紛れてカウラと神前が付き合うことを認めてるんだ?おかしくねえか?アタシがこいつを専用の『アダルトグッズ』にするって言ったらそれをあっさり覆したのにベルガーの時はまるで歓迎するような態度を取る。不公平じゃねえか」
かなめは羽交い絞めにしていたカウラから手を離すとそう言って嵯峨に詰め寄った。その隣では嵯峨公認で誠と付き合っても良いと言われたと信じ込んでいるカウラが顔を赤らめながら静かに制服を着ていた。
「そりゃあ、うちの女子で、一番まともなのはラビロフだな。アイツは普通の女だ。あいつには常識も通用するし、神前も安心して任せられる。ただ……アイツは時々世をはかなんで隊の屋上でぼんやりしている時があるからそこだけは注意。そして次はひよこ。アイツは天然だけど病気のお母さんと幼い弟を世話して一家の大黒柱が立派に務まってる。大したもんだよ。まあ、アイツの下手なポエムを一日中聞かされることになるのは間違いないけど。次がその問題のベルガーだ。『パチンコ依存症』という致命的な欠点を持つが、他にこれと言って人格に問題がない。それ以外の女?俺は隊長としてお前等を見てきたからはっきり言える。完全な『人格破綻者』で『社会不適合者』だ。そもそも結婚なんかする資格はない!だから、俺はベルガーと神前の関係を認めたの。反論する余地ある?かなめ坊、お前さんも自分が『人格破綻者』だって言う自覚ある?あと、そこで他人事を気取ってるクラウゼ。お前さんもお見合い百回断られたのはお前さんが社会的にみると完全な『アウト』な存在だから。その自覚ある?」
嵯峨の容赦のない舌鋒がかなめとアメリアに突き刺さった。
「叔父貴……それは言い過ぎだろうが……確かにアタシは銃を振り回す癖があるのは認めるが……それで『社会不適合者』というのは……」
かなめはなんとか嵯峨の『社会不適合者』認定を取り消させようとした。
「どこの世界に銃を振り回す人間を社会に適応した人間と認める社会があるの?あるなら教えて?そう言う国がそもそも社会的に成り立つのか俺としても興味がるんだよ。具体的にどこの国か言ってみて?さあ」
言い訳をしようとするかなめをすぐさま嵯峨は論破した。
「えー、私も『社会不適合者』なんですあ?ちょっとお茶目なだけじゃないですか」
こちらは自分に全く身に覚えが無いという表情でアメリアが嵯峨に向けてそう言った。
「クラウゼ。部下だと言ってそれを理由に人間をネットオークションに出品する人間がどうしてまともな女だと言えるの?それにお前さん運航部の部長でしょ?あの運航部の女共の好き勝手やってる様。隊長が俺じゃ無ければとっくにお前さんなんて懲戒解雇だよ。そんな管理職失格を『社会不適合者』と呼ばなくて誰を『社会不適合者』って言うんだよ。それを言うなら俺が納得できるような『社会不適合者』という言葉の定義。ちゃんと出来るんだろうね?だから自分は『社会不適合者』じゃないって言うんだよね?違う?」
嵯峨にどこまでも正論を言われてしまえばかなめもアメリアも黙り込むしかなかった。




