第204話 悲しきものは宮仕え
「じゃあ今すぐ『廃帝ハド』の居場所を掴んでクバルカ中佐に倒してもらいましょうよ!今なら勝てるんでしょ?そうですよ!今のうちに叩いておけば問題はすべて解決じゃないですか!」
誠は力を込めて嵯峨に向けてそう叫んだ。
「おい、それは奴の居場所が分かってるってことが前提になる話だってことは言ってて分かってるよね?」
嵯峨はいきり立つ誠を落ち着かせるように冷たい口調でそう言った。誠は嵯峨の言うことがあまりに当たり前すぎるので沈黙することしかできなかった。しかし、すぐに気を取り直すと自分を奮い立たせるように口を開いた。
「じゃあ、すぐにでも探し出しましょう!東和警察だって『廃帝ハド』の危険性は分かっているはずです!同盟機構もその組織力をすべて駆使すれば……」
誠の珍しく自信に満ちた表情を見て嵯峨は大きくため息をついた。
「それが出来れば苦労しないよ。お前さんも交番とかで指名手配犯の写真が貼られてるのを見たことが有るだろ?あんな小物一つ捕まえられない東和警察にしっぽを掴ませるほど奴が馬鹿だと思ってたの?おめでたいね。同盟機構が動けばどうにかなる?それも楽観論だな。同盟機構加盟国の一部には『廃帝ハド』の影響力が及んでる国もある。お前さんはそんな信用置けない連中が正直に奴の居場所を俺達に教えてくれると信じてるんだ。もし、そこに奴が考える『やりようによっては』の罠が仕掛けてないって保証はどこにあるの?俺が奴ならそう言った同盟機構内部の協力者を使って俺達をせん滅させるような作戦を考え出す。現にこれまでも俺の所にどう見てもそうとしか考えられない情報は届いてきてるんだ。だから今は俺達は奴が『やりようによっては』勝てる準備を進めるのを指をくわえて見ている以外にすることはないんだよ」
嵯峨は少し悲しげにそう言った。
「そんな……それって僕達あまりにみじめ過ぎません?」
誠は盛り上がった気分の行き所を無くして脱力してそう言うしかなかった。
「それに俺達はあの怪獣退治をしていた映画に出てくる特殊部隊みたいに『廃帝ハドせん滅専門部隊』なんじゃないんだ。俺達の仕事はあくまでも軍隊が介入すると政治問題になりかねない遼州圏の各種問題に対応する『武装警察』というのが建前なんだ。そんな仕事を放り出して奴を追うことだけに専念することなんて司法局本局が許すわけないじゃないの。そんな事の為に俺やお前さんに給料を払っている訳じゃない。偉い人からそう言われたら俺も何も言えないんだ。役人なんてそんなもの。軍人なんてそんなもの。そして、社会なんてそんな仕組みで出来上がってるんだよ。怪獣ものに出てくるような怪獣だけを倒していればお給料がもらえる羨ましい境遇にある人達なんて現実社会にはありえないんだ。そのくらいの社会常識は持ちなさいよ。現実見なさいよ現実。夢でおまんまは食えないよ?」
嵯峨は教え諭すように誠に向けてそう言った。




