第203話 そして宿敵『廃帝ハド』の力について
「まあ、そんな馬鹿話はどうでもいいんだ。ただ、これから話すことはちょっと重要だから聞き逃さないでね」
嵯峨は相変わらず抜けた調子で嵯峨に語り掛けた。その様子にどことなく影が映っていることが誠を不安にさせた。
「なんです……その重要なことって」
不安に駆られた誠の口から自然にそんな言葉が漏れていた。
「正確なところは俺も分からない。ただ、その400年生きてるお前さんの身近にいる人に負けてるってことはランや康子義姉さんほどじゃないのは間違いないが……例の『廃帝ハド』。奴はやりようによってはランを倒せるだけの力はあるだろうな」
嵯峨はそう言ってタバコの煙を天井に向けて吹き上げた。その態度にはある種の覚悟のようなものがあるように見えた。
「『やりようによってはクバルカ中佐に勝てる』……それだけ強い相手が……でも、なんでそんな人が今まで何もしてこなかったんです?隊長は『やりようがある』って言いましたよね?つまりクバルカ中佐にも勝てるってことじゃないんですか?」
誠はあまりに深刻な言葉の内容とそれを感じさせない力の抜けた嵯峨の態度に呆れながらそう言った。
「そう、『やりようによっては』なんだ。奴も自分の力が一対一で『やりようによっては』ランに勝てる程度だという自覚がある。だからランが公然とこの東和の街をウロチョロしている以上、その『やりようによっては』の準備を進めていた。そして今もその準備を着々と進めている。奴も知ってるさ、ランが絶対に『やりようによっては』勝てる程度の戦力をそろえて戦ったとしても多分簡単に勝てる相手ではないことくらい。それに、その時はおそらくそのお前さんの身近にいるランと互角にやれる人物が加勢に加わることも考えられる。そうなったら奴の思惑は終了だ。一対一なら『やりようによっては』勝てるかもしれないという状況が、数でも負けてる、実力も負けてる。もうすでに勝ち目なんてもんは無い。だからこれまで……そして今でも身をひそめたままこちらの状況を伺っている」
嵯峨の言葉に誠は恐怖した。『廃帝ハド』の前では『特殊な部隊』の隊員はラン以外は足手まといでしかない。百戦錬磨の策士である嵯峨も、ランが見どころがあるというかえでも、そして誠自身も『廃帝ハド』の前ではランの足を引っ張るだけの存在に過ぎない。その現実が誠を打ちのめした。
「だからね、奴はしばらくは出てこない。奴の配下も『やりようによっては』の準備で大忙しだ。その準備の過程でお前さん達と何度か鉢合わせしたというのがお前さんが奴の配下と遭遇した事件の真相なんじゃないかなあと俺は思ってるんだ」
嵯峨はそう言うと誠を正面から見て時に嵯峨が見せる策士の冷酷な笑みを浮かべて見せた。




