第200話 それでも続く地球圏の『本能』に踊る政治
「そう言えば……お前さんがうちに来てすぐだったかな?地球圏は『憎悪の民主主義』で戦争ばかり……まあ、そのほとんどが民族浄化を目的とした核戦争なんだがね、そればかりを繰り返していると言ったよね?」
嵯峨は誠の顔を見上げるとタバコをくわえたままそう言った。
「ええ、確かそんな話を聞いたことが有ります。格差が拡大して金を持っている人が好きに票を操れるようになって民主主義の意味がなくなったって」
誠は僅かな記憶をたどりながらそう答えた。
「大体覚えてるみたいだな。さすが高偏差値」
そう言って笑う嵯峨にはどう見ても侮蔑の色しか見えなかった。
「その『憎悪の民主主義』の特徴は有権者の『理性』でなく、『本能』を動かすことで成り立つんだ」
嵯峨の言うことに誠はしばらく理解できず首をひねった。
「政治って『理性』でやるものじゃないんですか?『本能』でやる政治なんて聞いたことが無い」
そう答える誠に嵯峨は苦笑いを浮かべた。
「あのさあ、お前さんも投票所行ったことあるだろ?この東和共和国でも一応20歳になると選挙権くらいくれるんだから。そこでする事は候補者の名前を書くことだ。その行為のどこに『理性』が必要なの?文字くらいなら字を覚えたての幼稚園児でも書けるわな。たとえその有権者が幼稚園児並みの『理性』の持ち合わせしか無くても20歳過ぎてればこの国では投票は出来る。違うか?」
嵯峨の言葉にある意味軽蔑のような意味が含まれていることに気付いて誠は嫌な顔をした。
「別にそんな有権者を馬鹿にして言っている訳じゃないよ。でも『本能』で煽られて地球人が持つ『戦うこと』、『愛すること』、『敵を認識すること』などの『本能』に訴えかけてあたかもそれが『理性』的判断と誤解した有権者を動かすには地球人のその『本能』を刺激してやるのが一番なんだ。そうすれば必ず選挙には勝てる。いくら『理性』が大事だと言っても誰もその候補者には投票しない。だから『自衛のために核の使用は正しい事だ』と勇敢なことを言って『本能』を突き動かした政治家が必ず勝つし、『我々の民族と国家を愛するのは当然の国民の義務なんです』という政治家もまた地球人の『愛』の『本能』を刺激して選挙に勝つ。そうして『戦い』と『愛国』を叫ぶ政治家が全権を握り、公約である敵対国への核攻撃を行う。これが21世紀半ばから今まで地球では普通に繰り広げられてきたんだ」
誠は嵯峨の言葉に唖然としていた。




