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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第六章 不吉な朝の一幕

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第20話 こだわる女のこだわる朝は猥談で始まる

「おはよう。神前はいつものように迷惑をかける女たちに囲まれて困っているようだな」


 そう言って声を掛けてきたのはカウラだった。どこか眠そうでいつもなら緊張感ばかり感じるカウラの表情には疲れの色が見えていた。


「カウラちゃんどうしたの?なんだか疲れているみたいで……部屋で徹夜でパチンコでもしてたの?」


 アメリアはフランスパンをかじりながら厨房に向うカウラに声をかけた。


「ああ、神前に送る『愛の手紙』の編集が徹夜になってしまってな。どうしたら神前により興奮してもらえるかを考えながらやっていたら夢中になってしまった。神前、明後日には出来上がるから期待して待っていてくれ。今度こそ貴様の期待に沿える出来になっていると思う」


 そう言うとカウラはリンとは反対側の誠の隣の席に腰を掛けた。


「ああ……でも最近のカウラさんの『愛の手紙』のこだわりようは……確かにカウラさんのあそこは本当にきれいなんで興奮するんですが……あんなにあそこを拡げて痛くないんですか?」


 誠はカウラから送られてくる無修正動画『愛の手紙』の事を思い出してそう言った。


 最初は恥ずかしがるばかりだったカウラの動画はここのところカウラが男の秘密の部屋である『図書館』から淫語ものAVをひたすら持ち出して研究を続けた結果、とてつもない清純派AV女優の自我撮り動画のような作りになっていた。


「オメエもやっぱ小隊長なんだな。かえでと言いうちの小隊の小隊長は露出狂の気が無いと務まらねえらしいや。アタシには無理!アタシは見せるより見る方が好き!アタシは真正のサディストだからもだえ苦しむ相手を見るのが何より楽しいんだよ。まったく自分が悶えて何が楽しいんだよ……理解できねえや」


 かなめは相変わらず不機嫌そうにそう言うと乱暴にシチューを口に運んだ。


「私を深夜にあの全裸徘徊する趣味のある日野と一緒にするな!私の目は常に神前だけに向いている!私の裸を見て良いのは神前だけだ!あんな誰にでも自分の裸を見せたがる変態と一緒にされるとは不愉快だ!それと人が悶えるなら自分ももだえるのが愛の形だ!そんなことも分からないから貴様は何時まで経っても『女王様』なんだ!私だけが神前にはふさわしい!」


 カウラはムキになってかなめに反論した。しかし、誠はだまってカウラの論理も相当歪んでいるなあと考えていた。


「でも所詮はオメエは男を知らねえ身体だからな。自分で気持ちよくなるのが神前も気持ちよくなると信じてるんだろ?それじゃあ駄目だな……アタシは色々試しているが……アタシのを見たら神前はすぐにアタシのものになるぜ……『女王様』?上等じゃねえか。今でもアタシの副業『女王様』時代の伝説がネットにはたくさん上がってるんだ。『機械の身体を持つ最高のサディスト』。そんワードで検索すれば検索結果は百万じゃ効かねえぞ。それも全部アタシに関する記事だ。そこまで行って初めて最高の女と言えるんだよ」


 かなめは余裕のある表情を浮かべてカウラをにらみつけた。誠はかなめの自慢が逆に自分をドン引きさせている事実をかなめが理解する日が来るのは何時になるのだろうかと考えていた。


「あのーお二人とも、朝っぱらから衆人環視の下そんな話をされると僕に突き刺さる先輩方の視線が痛いんですけど」


 さすがに誠は直接的な表現で二人の考え方が根本的におかしいとは指摘できないので、誠は言い訳するように二人を仲裁しようとした。


「誠ちゃんも純情ぶっちゃって本当にもう!そう言いつつカウラちゃんので昨日も何度か自己発電したんでしょ?でもまあ、私のはようやくスタジオも取れて撮影の準備は着々と進んでるからそれ以上のものが見られるわよ。自己発電だけじゃ物足りなくなったら何時でも言ってね!その時は最高のおもてなしをしてあげるから!そしてそのまま結婚!姉さん女房ってものも良い物よ!」


 アメリアはそう言って誠にウィンクしてくる。ここでもアメリアの行動がかなり普通とは言えないということを指摘したかったがアメリアの滅茶苦茶な論理を聞かされるだけなのでやめた。


『うちの女子は人の話を聞かない……僕は普通の朝を迎えたいだけなのに……普通に朝食が食べたいだけなのに……なんでこんな猥談から朝を迎えなければならないんだ?僕は何か前世で重大な悪事でもしでかしたのか?お釈迦様。僕はそんなに悪い人間なんでしょうか?悪いところが有ったら直します。教えてください。お願いします』


 誠は自分がこの寮の女子の性のおもちゃになり始めているという自覚を最近持ち始めていた。そしてそんな運命を呪いつつも、自分がかつてモテたかった頃を思い出して、その頃よりは今の環境はマシなんだと必死に自分に言い聞かせようとした。

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