第199話 地球人の戦争を好む性質を利用して肥え太った東和と遼州同盟成立の理由
「でも……それじゃあこの遼州系に住む元地球人達はどうなんですか?」
誠の問いは身近な話になった。ここは遼州同盟司法局実働部隊の喫煙所である。遼州同盟には甲武国を始めとする元地球人の国も存在する。嵯峨はその誠の問いを聞いてタバコを吸いながら笑っていた。
「連中の事か?連中はこの400年の間、東和共和国に一度も戦争を吹っかけたことが無い。そして、明らかに軍事的に劣っている遼帝国にも戦争らしい戦争を仕掛けたことが無い。確かに連中は戦争が好きだ。この400年間地球人達同士で何度戦ったか分からないくらいの戦争をやっている。そしてベルルカン大陸に移住した元地球人と遼州人の混血児達も果てしない内戦を今こうしている間にも続けている。それはお前さんの言う通りだ」
嵯峨は誠の言うことを認めて静かにうなずいだ。
「でも、連中も遼州人の存在と20年前の戦争のあまりに大きな禍根によって『理性』で『本能』を押し殺した方がいいと感じ始めているんだ。この400年間。戦争を1度もしなかった東和共和国はいつの間にかこの遼州圏の富のほとんどを独占する強大な経済大国になりあがった。戦争には金がかかるからその度に『戦時国債』という国の借金をするんだが、それを一手に引き受けていたのが他でもない東和共和国だ。地球人が戦争をするたびに儲かるのは遼州人の東和共和国。自分が血を流せば流すほど、東和共和国はデスクに座ったままで自分の国の資産が膨れていく様を笑って見守っている。そんな状態を連中が面白いと思うかい?それを学ぶのに400年かかったという事実に俺は地球人は馬鹿なんじゃないかとしか思わないよ」
嵯峨はそう言って笑って見せた。
「それに、連中も信じたくはなかったが、遼州人には自分達には無い力が有る事を知ってしまった。それを知らしめたのはお前さんなんだぜ?そんな相手に戦争?馬鹿馬鹿しくてやってられないよ。自国の利益や自国の防衛を叫んで戦争をするたびに、楽して他国がたんまりとその甘い汁を吸う。それをやめさせるために地球人もそれまで手を結ぶなんて言うことを考えもしなかった相手と手を組んで遼州同盟を作った。その中には自分達の血を啜って富で膨れ上がった国である東和共和国の名前もある。戦争が起きるたびに自分は逃げ出してひたすら足を引っ張った遼帝国の名前もある。ならばここは手を組んで遼州圏内では戦争はしないということを『理性』で決めることにする。その程度の頭脳は地球人にも有るんだよ。分かったかな?」
嵯峨は物わかりの悪い子供を教え諭すような調子でそう言った。




