第198話 進化によって生まれた文明の必ずたどる終焉
「進んだ農業は多くの富の蓄積を産む」
嵯峨はまるで誠の高校時代の日本史教師を思わせる口調で話を続けた。
「当然、それぞれの集落で富の差が生まれるわけだが、ここで人類が進化の過程で得た『戦う』本能が目覚め始めるわけだ」
誠はその話に疑問を思った。
「なんでですか?困ったら助け合うのがお互い様じゃないですか?そこに『戦う』本能なんて唐突過ぎますよ」
その問いに嵯峨はただ一抹の笑みを浮かべただけで話を続けた。
「それは遼州人の発想。後に聖人君子が現れてそう言うことを説いて回るようになるまで地球人にはそんな発想は無いの。無いなら奪えば良い。それが『戦う』本能を持つ地球人が最初に始めた事。それは次第に規模が大きくなっていった。武器の性能が上がり、産業革命により飛躍的な威力の兵器で敵を絶滅させることが出来るようになった。そして、自分のやってることを人にやられるのは御免だから身を守るためにより強い集合体としての『国』という組織を発明した。そこでは同じ言語と同じ肌の色を話す人間だけの間でその『国』という物の為に命を賭けて戦うことが強制されるシステムが生み出された。元々本能に『戦う』ということを肯定するように進化した地球人はそれを受け入れた。そして際限なく戦いを続け、今でも戦い続けている……それが現実なんだ」
嵯峨の言う言葉には戦場を知る者の重みがある。誠にはそう感じられた。それでも誠には反論したい気持ちがあった。
「でも地球人にも戦争は嫌いだとか言う人がいるじゃないですか?核の使用を禁止した戦争が何度かあったとも聞いてますよ。それって隊長の言うことと矛盾してますよね?」
誠の率直な問いに嵯峨は残酷めいた笑みを浮かべた。
「それはね、あくまで『理性』という『本能』の上に立ってる部分で判断してそう言ってるんだ。そう言っている人間も『本能』では『戦い』を希求してやまない。なぜならそれは地球人がそう進化したんだもん。戦争をやめろなんて言うのは地球人に『これからは四本足で歩け』と言うのと同じことなんだ。『理性』を使えば地球人も四つ足で歩くよ。しかし、普通は二本足で歩く。だから地球人には戦争を止めることは絶対にできないし、核戦争を止めることも絶対に不可能。このままのペースで地球人達が核戦争を続けて行ったら300年もしたら地球人の金持ちご愛用の放射能除去装置も機能しなくなるし、そもそも地球では植物すら生存できない放射能濃度になる……それは地球人自身が一番よく分かっている。でも戦争も止めないし、勝つ為なら核戦争を続ける。『理性』ではそれが滅びの道だと分かっていても『本能』がそうする以外の道を選ぶことを拒否する。それが地球人なんだ」
そう言う嵯峨の顔は少し悲し気に誠には見えた。




