第193話 それではそもそもなぜ『人類最強』はわざわざ人型兵器に乗るのか?
「でも、今まで聞いてた話から総合して一つの疑問が浮かんだんですけど……」
誠はそう言ったのを見て嵯峨は興味深そうにタバコをくわえたまま誠を見上げた。
「言ってごらん?俺も分かる範囲で答えてあげるよ。アイツが本当にアイツが言うようなことが出来るのかは俺も知らないし、見たこともないから。そもそもハッタリかもしれないし」
嵯峨は相変わらずだるそうにそう言った。
「力は炭素の棒をダイヤに変えるほどある。光の速度で走れる。空も飛べる。魔法少女に目の必殺技を超える魔法……いや法術を使える。それならなんでシュツルム・パンツァーに乗るんですか?そんな事なら値段の高いシュツルム・パンツァーなんか用意せずに素手で戦った方が強いような気がするんですけど……」
誠は嵯峨のこれまでした話からランの強さを推測するとそう言う結論が必然的に導き出されてきた。
「ああ、そのことね。答えは簡単。アイツは『パイロット』だから。以上」
嵯峨の答えはあまりにあっさりしていた。というか誠にとっては答えになっていなかった。
「なんですか!その答えは!今、クバルカ中佐の乗ってる05式!遅いですよ!光の速さどころか第二次世界大戦のレシプロ戦闘機並みのスピードしか出ませんよ!それに攻撃力だってファンタジーに出て来る最強魔法にはとても及ばない!怪獣映画の怪獣を倒すなんて230ミリカービンとダンビラじゃ無理ですよ!でも、クバルカ中佐は素手でそれを全部クリアーできるんですよ?それを『パイロット』だからって……答えになって無いじゃないですか!」
誠は思わず感情的になってそう叫んだ。
「朝から元気だねえ……でもアイツには宇宙の任務もある。あれか?お前さんは宇宙服一つでアイツを宇宙に放り出せと俺に言うわけだ。残酷だねえ……宇宙を漂流する感覚。俺の高等予科学校の時に体験したがそれはそれで結構恐ろしいものなんだ。それを、お前さんは平気でやれというわけだ。そんな残酷な命令、俺には出せないよ。お前さんは優しい奴だと思っていたが上官を身一つで宇宙に放り出せとか平気で言えるんだ……そんな人間に育てた覚えは俺には無いよ」
嵯峨はふざけた調子で困った顔を作りながらそう言った。
「それだったら救命ポッドに乗せるとか。大きな箱を用意してあげるとか。別にシュツルム・パンツァーなんていう高価な人型兵器を……」
そこまで誠が言ったところで嵯峨は誠の言葉を止めた。
「そんなにまでしてランを生身で戦わせたいの?アイツが優秀な……それこそシュツルム・パンツァー戦においてはこれまで数千回戦って一度しか負けたことが無いパイロットなのは事実なんだもん。だったらシュツルム・パンツァーがすでにある!これに乗せる!何が悪い?宇宙に生身で放り出されて酸素が切れてもがき苦しむランの顔がそんなに見たいの?アイツ酸素が無いと苦しいし、アイツは不死人だからその苦しみが永遠に続くわけだ。残酷な部下を持ったもんだねえ。ランに同情してきたよ俺は」
嵯峨はその屁理屈で誠を幼女を宇宙に放り出して喜ぶ極悪人に仕立て上げて満足げに笑っていた。




