第191話 『人類最強』の分身の術はそれ自体が凶器らしい
「まあ、これで巨大怪獣が現れても巨大ヒーローが侵略に来ても東都の安全は守られることが証明されたわけだが……」
嵯峨はさもそれが当たり前のようにそう言った。
「いや、巨大ヒーローはヒーローなのであって侵略はしないと思うんですけど……」
そんな誠のツッコミを無視して嵯峨は話を続けた。
「続いては忍者モノ。これは結構アイツも気に入ってね。そのシリアスな戦国時代の社会風刺が奴のツボにはまったらしい。戦国時代に厳しい身分制度。そしてそれに従わなければならない忍者の定め。アイツは涙を流しながら見ていた」
嵯峨は細い目をしてそう言うと吸い終えたタバコを灰皿に押し付けた。
「隊長はどんな忍者モノをクバルカ中佐に見せたんですか?でもそれじゃああんまり中佐の強さは意味をなさないでしょ」
誠の問いを無視して嵯峨は笑っていた。
「そう思うでしょ?でも忍者モノには定番の『忍術』というものがある。しかし、この『忍術』実際にやろうとすると絶対にできないものばかりなんだ。水の上を走ったり、分身したり、爆発物を爆発させてその場から消えたり……そんな便利に地球人は出来ちゃいないんだ」
嵯峨はそう言って再びタバコに火をつけた。
「でも、クバルカ中佐は出来ると。あれですか?右足を出したらそれが沈む前に左足を出して……というのを繰り返して水の上を走ったり。光速で移動して一瞬だけ移動速度を落とすというのを繰り返してあたかも複数自分がいるように見せかけたり。爆発物を爆発させても……ああ、あの人は不死人でしたね。死にませんよね。失礼しました」
誠は一人ボケツッコミをしながらそう言った。
「なんだ、分かってるじゃないの。でもさあ、水の上を走ったり分身したりって……その場に『空気が無い』ことを前提にしていることは理系のお前さんなら分かるんじゃないかな?」
嵯峨は試すような調子でタバコをくわえてそう言って笑った。
「そうですね。水に沈まないように左右の足を出すには相当な速度を出す必要がありますし、光速移動ということはその前に音速を超えるということを意味しますから当然その時に強烈なソニックウェイブが発生しますから……そもそも分身して見せるよりその衝撃波で相手を倒した方が早いような気がしますよね」
誠は嵯峨に言われて忍術のそもそもの矛盾に気が付いた。
「そうなの。アイツもそのことくらいは知ってたの。だから、忍者はなんで分身するということは自分と同じように光速で走れるわけだから、その過程で発生する衝撃波で敵を攻撃するということを考えない時点で馬鹿なんだというんだ。そんな、地球人には光速はおろか音速で走れる人間は一人もいないよ。でも、アイツは走れる。どうだ?それでもアイツに人間扱いしてほしいと思う?お前は光速で走れる?俺は無理」
嵯峨はそう言って笑った。誠はもしランが光速で走れるとしてその時来ていた服がどうなるのかが気になって仕方がなかった。




