第187話 この星には愛など存在しないと『宇宙一のアダルトグッズ』は断言した
「もういいです。僕には西園寺さん専用『アダルトグッズ』として生きる道を選びます。僕も西園寺さんは嫌いじゃないですからそう言う生き方しか残されていないならそれもアリです」
誠は決意を決めたようにそう言った。
「ようやくこれでお前さんも一つ大人になれたわけだ。おめでとう。そのついでにだ、お前さんの妙な妄想を破壊しておくと『愛』なんて言う物はこの宇宙には存在しない。そして俺達遼州人にはそもそも『愛』を信じる能力がない。これは悲しいけど事実なんだよ」
タバコをくゆらす嵯峨の顔には皮肉めいた笑みが浮かんでいた。
「随分と極端な物言いですね。遼州人は『愛』を信じられないんですか?それってちょっと悲しくありません?」
誠の問いに嵯峨は笑っていた。
「俺はね、元地球人の国甲武で育った。甲武で流行る歌……ほとんどが『愛の歌』なんだ。カフェーでも街角でも……ああ、甲武は今年になるまでラジオ放送すらなかった国だから全部蓄音機から流れて来るんだけどね。嫌って言うほどラブソングが流れてる。そして本屋に行くと文学の主流は『恋愛とは何か?』そればっかり。どれもこれも同じようなテーマで読んでて嫌になるくらいだ」
嵯峨はそう言ってタバコをふかした。
「そんな俺は甲武を捨ててこの遼州人の国東和に来た。そこではコンビニでも街角でも、ラジオでもテレビでも歌が流れてる。しかし、ラブソングは一曲も無い。自分の孤独を嘆く歌。強く生きる自分を励ます歌。友と喜びを分かち合う歌。そして世の中に見捨てられた人々を慰める歌。そんな歌ばかりが人気でラブソングはこの国では一切売れない。なぜなら遼州人は誰も愛に興味が無いから。本屋に行く。恋愛小説が一冊でもあるかなあとか思ったら、地球の古典文学作品を除くと東和の作家が書いた恋愛小説なんて一冊も無い。読書家の関心も社会問題とか、家族の問題とか、職場の問題とかにしか関心がない。だから遼州人は恋愛小説なんて誰も読まない。地球人じゃ考えられない話だ」
誠はそう言われてみて気付いたことが有る。誠が産まれてからこれまで見てきたアニメでエロが出てこないアニメには一切恋愛要素は無かった。
「確かにそうかもしれませんね……西園寺さんから『これを聞け!この女の歌手がアタシが好きな歌手なんだ!』と強く言われて何人かの昭和という時代の女性歌手のCDを貸してもらったんですが、その中にはラブソングも有るんです。でも西園寺さんが路上ライブでその歌手のカバーを歌う時はまるで避けてるみたいにラブソングは歌わないんです」
かなめの身勝手な路上ライブのサクラに動員されることが多い誠はそうつぶやいた。
「そうだな。かなめ坊は地球人と遼州人のハーフだが、その気質は明らかに遼州人のそれだ。アイツが愛を理解している事なんか考えられないな」
嵯峨はそう言ってタバコの煙を見つめていた。




