第185話 否定にかかる誠に『高性能アダルトグッズ』は残酷な事実を突きつけた
「じゃあ、安城少佐に振られまくってたのはどう説明するんですか?確かに今は……隊長と付き合ってますけど……最初はあんなに無関心な対応を取られてたじゃないですか!」
誠は強い口調で『自分はモテない』と言っていた時代に嵯峨が思いを寄せていたがいつのまにか嵯峨の内縁の妻の一人となっている公安機動隊隊長の安城秀美少佐の名前を挙げた。
「それこそ、いかに俺が『高性能アダルトグッズ』であるかの証明そのものだ。あの人は高給取りだ。あの人には『現金自動支払機』としての男なんて興味がない。かといって俺がいかに『高性能アダルトグッズ』であったとしてもそれを無理やり証明しようとすれば間違いなく俺はセクハラで解雇される。だから俺は秀美さんには振られ続けた」
ようやくここで嵯峨は少し悔しそうな顔をした。しかしすぐにその表情は自信に満ちたものに変わる。
「だが、ここで転機が訪れた。お蔦がやって来たんだ。お蔦と俺がイチャイチャする様を潔癖症の茜が許すはずが無い。当然動くだろうと俺は踏んでいた。そして予想通り茜は動いた」
満面の笑みを浮かべる嵯峨に誠は言葉が無かった。
「秀美さんは電子戦特化型サイボーグだ。当然、そんな秀美さんに俺の本当の身分である遼帝国皇帝ということなんて最初からお見通しだったんだ。潔癖症で、なんとかお蔦と俺を引き離したい茜は自分の帝位継承権を秀美さんに譲るということで俺と秀美さんをくっつけて一対一の夫婦にしようとした……しかし、茜は青いな。俺はその上を行く策士なんだよ。俺は女に関しては欲しいものは手放さない主義なんだ。だから茜がくれた俺の『高性能アダルトグッズ』としての機能を発揮する機会を得たのはまさに俺の望んだ展開だった」
得意げに語る嵯峨だが、聞いていた誠は完全に嵯峨の節操のなさに呆れ果てるしかなかった。
「秀美さんはサイボーグだ。サイボーグの性的感覚は生身の女性の数千倍だという。当然、あの凡人なら余裕であしらうお蔦ですら俺無しで生きられないようにするほどの『高性能アダルトグッズ』である俺の前に秀美さんの理性が耐えられるわけがない。そうして、秀美さんもまた俺の『高性能アダルトグッズ』としての性能を前に俺を手放すことが出来なくなった。すべての先を見る切れ者、状況分析の天才、そして同じ目的を持つ同志。秀美さんは俺をそう言うだろうが、それは秀美さんの俺に対する照れ隠しなんだ。要するに秀美さんにとっては俺は手放すにはもったいない『高性能アダルトグッズ』なんだ。これが愛というものの現実。モテる男とモテない男の違い。分かったかな?」
嵯峨は完全勝利を宣言するようにタバコを揉み消してソファーから立ち上がった。




