第182話 いやらしいものを見るような視線を浴びながら
隊に到着した誠を待っていたのは隊員達の好奇の視線だった。
『アメリアさん……全隊員に僕が西園寺さん専用の『アダルトグッズ』になることが決まったとメールしたな……あの人は面白い事の為ならばいくらでもマメになれる人だからな……』
更衣室では誠から聞こえないようにささやきあいながら下卑た笑みを浮かべる整備班員達の視線を浴び、廊下を歩けば運航部の変な髪のねーちゃん達が立ち止まって誠を指さして笑いあっている。
誠は一日で自分が『人間』から『アダルトグッズ』という卑猥な存在に転落した事実を実感していた。
「よう!『アダルトグッズ』!冴えない顔して何してるんだ?」
そう声を掛けてきたのは喫煙所でタバコを吸っている嵯峨だった。その顔はこの状況を作り出したアメリア以上に面白いものを見たというように満面の笑みに彩られていた。
「隊長、人にあいさつするのにその言い方は無いんじゃないですか?」
誠は目の前の『脳ピンク』な隊長である嵯峨惟基にため息交じりにそう言った。
「良いじゃないの。『アダルトグッズ』。立派に世の中の女性の役に立っている。何か悪い事でもあるのかな?それともお前さんはランのスパルタでウジ虫から立派な『ハエ人間』になるのがご所望なのかな?俺はその映画を見たことが有るが……ラストは悲惨なもんだよ。それだったら『アダルトグッズ』として世の中の為に……いや、かなめ坊の為になった方が良い。その方がお前さんも幸せになれる」
嵯峨は誠がかなめの『アダルトグッズ』となることが決定しているかのようにそう言った。
「でも、あの『女王様』でサディストで物を破壊することに生きがいを感じる西園寺さんの『アダルトグッズ』ですよ。その結末……隊まで送ってくれた妹のかえでさんからも言われましたけどかなり悲惨な運命が僕を待ち構えているとしか思えないんですけど」
誠はそう言って襲って来る疲れに耐えかねて嵯峨の座るソファーの隣に腰かけた。
「まあね、アイツは人の命なんてなんとも思ってないからね。で、かえでは対案を提案してきたろ?なんて言ってきた?」
嵯峨は完全に他人事だというように興味本位で誠にそう尋ねた。
「かえでさんは今すぐ結婚して僕に家庭に入るように言いました。『専業主夫』だとかえでさんは言うんですが、かえでさんが僕に期待しているのは西園寺さんと同じく『アダルトグッズ』として働くことと、加えて子づくりマシーンとしての役目を果たせということらしいんで……それだったら対等な夫婦として本当の意味で『専業主夫』になることを提案してきたリンさんの方の扱いの方がまだマシです」
誠は半分人生を諦めたような口調でそう言った。




