第177話 200億円の行方
「ごきげんよう、皆さん」
かなめがいつものように流し込むような異常なスピードで食事を開始した時現れたのはリンだった。
「面倒なのが来たよ……」
それまでの口に物を放り込むだけの作業というとても食事とは思えない行動を取っていたかなめは手を休めてうんざりした表情を浮かべた。
「かなめ様。200億円の受け取りはどのような形で行えばいいのでしょうか?振込でしょうか?手形でしょうか?出来れば現金による振り込みを私としては希望しています。金や、債権という形での受け取りは認めませんよ。金は遼帝国が最近盗掘を行っているらしく暴落しています。債券市場はいつ『ビッグブラザー』の電子操作により紙切れになるか分かりません。そんなものを信用するほど私は甘くは有りませんので」
リンはそれだけ言うとそのまま厨房に自分の分の食事を取りに向かった。
「ああ、200億か?払わねえ。アメリアのオークションが無効だってことはあのランの姐御が決めたことだ。つまり、神前の所有権の移転は最初から発生しなかった……最初から神前は姐御の所有する『ハエ人間』だったわけだ。しかし、神前は『ハエ人間』より、アタシに弄ばれて喜ぶ『アダルトグッズ』になる道を選んだ。姐御はその時アタシに金の要求をしなかった。だからアタシは誰にも金は払う必要はねえ。200億?アタシのその金は庶民が汗水たらして働いた金をアタシが最上位の貴族だということで権利として得ている金だ。無駄になんかできるかよ」
かなめはリンに向けてそう言うと再び口に食品を詰め込む作業を再開した。
「本当に、かなめちゃんは勝手ね。でも、ランちゃんはお金の話をしなかったのはランちゃんはそう言うのは粋じゃ無いって言う美学の持主だからでしょ?当然、かなめちゃんにはリンんちゃんに200億払う義務があるし、私もリンちゃんから前金1億円貰っちゃったからリンちゃんの転売を認めて29億リンちゃんから貰う権利がある。リンちゃん……とりあえずそっちの方は急がないわよ。それこそ出世払いで良いから」
アメリアは嬉しそうに戻ってきてかなめに押しのけられて隣の席に移ったパーラをさらに押しのけてその席を占領した。
「かなめ様。それは少し無理があるのではないですか?そもそもこの話はクラウゼ中佐のオークションが無ければ無かったことです。つまり誠様は今でもクバルカ中佐の所有の『ハエ男』だった。だから誠様を『ハエ男』の境遇から救うためにはこのオークションが成立している必要があります。それでなければこの話は成り立ちません」
リンは相変わらずの無表情でそう言った。
「そんな話は知りませんー!アタシとあの一度吐いた言葉は絶対取り消さないことが信条のランの姐御との女の約束だからな。金の話は無しだ。神前は姐御公認のアタシ専用の『アダルトグッズ』になったわけだ。かえでや、オメエが『同梱商品』とか言って付いてきても無駄だぞ。アタシは目的の商品以外は捨てるからな」
かなめは異常な速度で食事を終えてそう宣言した。




