第175話 パーラの思いやりと『転職情報誌』
「あ、『アダルトグッズ』の神前、おはよう」
「『アダルトグッズ』の割にいいもん食ってんな……ああ、そうか、その機能を維持するために精力つけてるんだ。頑張れよ」
「これでカウラ様は貴様の呪縛から解き放たれた……『アダルトグッズ』である貴様にカウラ様が思いを寄せるわけがない」
いつもは誠に声をかけてこない隊員達までも誠を弄りたいがために声をかけてくる。そしてカウラを神とあがめるヒンヌー教徒達は神前といつも一緒にいるカウラは清純なのが売りだから穢れた『アダルトグッズ』である誠はカウラから軽蔑される存在に落ちるだろうと歓喜の笑みを浮かべていた。
『居づらい……凄く居づらい』
誠はすっぽんのスープを飲み終えるとそのままなぜこのスープの付け合わせがそれなのか良く分からない鰻の白焼きを混ぜ込んだ酢の物に手を伸ばした。
「誠君、いいかしら?」
そんな誠に声を掛けてきたのがパーラだった。
「ああ、パーラさん。珍しいですね。サラさんの送りですか?ご苦労様です」
誠は考えてみればパーラと話す機会が少ないことを思い出していた。
『パーラさんもあのアメリアさんから僕が西園寺さんの『アダルトグッズ』にまで落ちたという事実を知ってるんだろうな……軽蔑してるかな……でもなんでパーラさんと僕ってこんな接点が少ないんだろう?まるで誰かが意図して邪魔してるみたいだ』
誠はそんなことを思いながらご飯に会うわけがない牡蠣の殻焼きを食べていた。
「今回も全部アメリアが始めたことなんでしょ?誠君には迷惑をかけてばかりで……あの人には何を言っても無駄だから私も諦めてるけど……」
そう言ってパーラは手にしていた厚い雑誌を誠に手渡した。
それは『転職情報誌』だった。
「誠君。今回の件で良く分かったでしょ?ここは『ブラック企業』以下の場所よ。特に誠君にとっては『ブラック企業』で『使い捨ての労働者』として扱われる方が幸せだと思うのよ……ここに居たら本当に誠君は『女性用大人のおもちゃ』として一生を終えることになる」
パーラの言葉を聞いて誠は呑み込みかけた牡蠣を吐き出しそうになった。
「あのー……僕には『ブラック企業』の『社畜』か『特殊な部隊』の『女性用大人のおもちゃ』として生きる以外の選択肢は無いんでしょうか?」
まともな神経の持ち主だと思っていたパーラの過激発言に誠は唖然としていた。
「だって仕方が無いじゃない。私もここに配属されて以降、色々転職活動の情報を集めたけど、転職なんて『ブラック企業』の辞めたり過労死したりした人員の補充ばかりってことが分かって来たの。そもそも、そんな理想的な職場なら人なんてやめないじゃない?この経済成長のまったくない東和共和国の転職市場なんてそんなものよ」
パーラの悟りきった態度に誠は自分の運命がどんどん暗転していく事実を見せつけられる思いをしながらマカが隠し味だというプリンに手を伸ばした。




