第172話 誠が人間になる方法
「でも、誠ちゃん。誠ちゃんがランちゃんのほとんどいじめのような境遇のウジ虫になってそのままハエになれば実は人間の要素を持ち得る可能性があるのよ……知ってた?」
突然、アメリアがそんなことを言い出した。
「そうなんですか?ウジ虫の境遇から脱出できるんですか?教えてください!どんな方法ですか?」
誠はそのままアメリアの所に行きその肩に縋りついた。
「うーん。正確には人間そのものじゃないし、そんな技術まだ開発されてないけど……地球人の事だから遼州人の瞬間移動能力に憧れてそんな研究始めちゃいそうだから……近いうちに人間みたいなものになれるかもよ」
アメリアの言葉に胡散臭さを感じながらも誠が人間になる道はそれしかなかった。
「どんな方法なんですか?教えてください!」
誠は涙ながらにアメリアにそう尋ねた。
「これも映画の話なんだけどね。まず、普通の人間……まあ、島田君辺りがちょうどいいわね、これを用意するのよ。それにハエである誠ちゃんがくっ付く。そして瞬間転移ポットを用意してその中に一緒に入る。そして瞬間転移が終わったころには人間である島田君とハエである誠ちゃんは融合して立派な『ハエ人間』として人間になれるの。ああ、まだ地球人もそんな技術を開発してはいないからしばらく先になりそうね。ウジ虫の寿命は短いから間に合わないかも」
アメリアはいかにも楽しそうにそう言うので誠は本気でアメリアの事を殴ってやろうかと考え始めていた。
「アメリアさん。それもフィクションですよね?瞬間転移ポッドなんてまだないじゃないですか……それにそれがあったところで『ハエ人間』でしょ?人間じゃ無いじゃないですか。それとなんでそこに島田先輩が出て来るんですか?あの人と融合なんて死んでも嫌でしょ。僕は割り算が出来ないヤンキーじゃ無いんで」
誠はそう言ってアメリアをにらみつけた。
「ああ、アメリア。あの映画か。アタシも東和に来て暇だった時レンタルビデオ屋で借りてみた見た。神前よ、『ハエ人間』を舐めるなよ。人間の知性と昆虫の体力を持つスーパーマンになれるんだ。サイボーグのアタシを遥かに凌駕する戦闘力と反射神経……うらやましいねえ……しかも融合するのが島田だとアイツの不老不死の能力までついてくる!無敵の兵士の完成だ!」
かなめまでもがそう言って茶化してきた。
「アンタ等真面目に答える気無いでしょ!そんな化け物に僕がなりたいって何時言いました?教えてくださいよ!二人して僕を化け物にして楽しいんですか!」
『うん、楽しい』
誠の真剣で悲痛な叫びにステレオで答えるかなめとアメリアの言葉を聞いて誠の心は決まってしまった。それは本当の意味での『苦渋の決断』だった。




