第171話 『アダルトグッズ』に与えられた選択権
「ランちゃん!それは滅茶苦茶なんじゃないの!出品したのは私よ!」
アメリアは誠がかなめ専用の『アダルトグッズ』として認められたことに抗議した。
「そうです、最初に私が落札しました。ですので、所有権は私にあるはずです」
リンもまた不満そうにそう言う。
ランはそこで腕組みをしてしばらく考えていた。
「そうだな……アタシは8歳幼女であるからして、『アダルトグッズ』の存在そのものを許せねー。それなら……そうだ、神前。オメエに選択権をやろう」
そう言うとランは手を打って誠を見上げた。
「ああ、自分が8歳幼女の発想の持主であることは認めるんですね。で?なんです?」
誠はどうせランもまたとんでもないことを思いついたのだろうと思ってそう尋ねた。
「アタシの好きな映画……これは珍しく『任侠映画』じゃねーが、その中の登場人物にアメリカ海兵隊の指導教官の人物がいる。アタシはいつもこの男の指導方針に従ってオメー等を教育しているんだ」
誠はランがやくざ映画以外の映画を見ることが有る事を知って興味を引かれた。
「そうですか、その人も相当スパルタなんでしょうね」
そう返すことが誠にできる精いっぱいだった。
「そうだ、そいつは部下というものは『人間ではなくウジ虫である!』と高らかに宣言している。だからアタシもいつもオメー等をウジ虫だと思っている。神前、お前の選択権はそれだ。西園寺専用の『アダルトグッズ』になるか、アタシがその指導欲求をみたすためのウジ虫になるか選べ。アタシは立派な指導教官だから選択肢ぐらいは用意してやる。出来た上司だろ?」
ランは最高の解決策を見つけたというように良い笑顔を見せた。
「あのー、ウジ虫なんですか?僕が人間になる要素は……」
誠は自分の人生の分岐点の行き先がウジ虫か『アダルトグッズ』かしか無いという事実に言葉を失った。
「はあ?オメーは軍人だ!階級の低い軍人はすべからく使い捨てのウジ虫だ!人間扱い?そんなもん百年はえーんだよ!『アダルトグッズ』になるか、ウジ虫になるか。どっちか選べ。西園寺のものになるか、アタシのものになるか選べ。すぐに選べ。戦場は時間との戦いだ。急げ」
ランは非情にそう言い放った。
「どっちも嫌なんですけど……」
誠は正直にそう答えた。
「神前、『アダルトグッズ』に命は無いがウジ虫には命がある。その意味ではウジ虫の方が尊いのかもしれないな。しかもウジ虫はいずれハエになれる。つまり成長の余地が残されているということだ」
カウラはそう言って誠の肩を叩いた。
「カウラさん。それ全然フォローになって無いんですけど。ウジ虫もハエも人間じゃ無いじゃないですか。というか害虫じゃないですか。僕には物になるか害虫になるかしか選択権が無いんですか?」
誠はランの提示した選択権が全く自分の為になっていないことに気付いてただ力なく涙を流した。




