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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第六章 不吉な朝の一幕

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第17話 それはそれは平穏な朝だった

 誠は寮の自分の部屋でいつもよりも少しだけ早く起きた。近頃はリンの夜這いとそれを阻止しようとするかなめ達の大騒ぎの精で眠りが浅くなっていてどうにもこういう日が続いていた。


 幸い昨日はリンの夜這いも無く熟睡できたような感じだったが、夢の中でサイレンと銃声が響いていたのが脳裏にまだ残っていた。それが幸福なことなのか、それともよりひどい出来事の前触れなのか。それが目覚めた誠にはすごく気になるところだった。


 誠は昨晩の夢の内容を気にしながら着替えを済ませるとそのまま階下の食堂に足を向けた。


「おはようございます、誠様」


 メイド服の眼鏡の女性が誠を迎え入れる。寮母という名称だが、どう見てもメイドにしか見えないかえでの家臣の女性三人と同じくかえでの家臣の女性シェフがこれも寮の調理担当としてこの寮には暮らしていた。そして、その女達の目が常に最初に誠の股間に注がれることになる事実にも誠は慣れ始めていた。


「ああ、高橋さん、おはようございます……」


 その一軒奇妙に見えるメイド服の女性達が何処にでもある男子寮で給仕をしている様はシュールを通り越して異常な光景だと誠は思っていた。


 メイド服の女性達は全員がこの寮の『オーナー』であるかえでの家臣兼性欲処理係だった。


 本来この寮は司法局実働部隊の男子下士官寮だった。そこに何度となく誠の持つ力を狙ったテロリストの襲撃を受ける誠を護衛するという名目で、かなめ、アメリアそしてカウラが住みつくようになった。この時点で、この寮は『男子下士官寮』という名目を失った。


 そして、司法局実働部隊を敵とみなす強大な敵『廃帝ハド』の直下の『法術武装隊』の襲撃があった時点で、この寮は『法術武装隊』の恐るべき力を持つ法術師達に対抗できる能力を持つ数少ない隊員であるかえでがこの寮をその貴族の財力に物を言わせて買い取り、この寮のオーナーとなった。


 彼女の狙いは。ただ一つ。誠の童貞を奪いそのデカいアレで最高の快楽に浸り、『許婚』から『夫婦』へとステップアップすることにあった。


 しかし、それを許さない女達の姿があった。


 かえでより先に誠の護衛を担当していたかなめ、アメリア、カウラの三人の女性士官達である。


「あら、早いのね、高橋さん。お仕事はどうしたの?あそこで何か揉めてるわよ。寮母のお仕事だったら寮生が食事をこぼしたら掃除に行くのが当然なんじゃないかしら?」


 アメリアの言葉に高橋は誠に静かに一礼すると、名残惜しそうにその場を立ち去った。


 朝のシャワーを浴びた後というようにシャンプーの香りを漂わせながらアメリアが誠の肩を叩いた。


「おはようございます、アメリアさん。食事にしましょうか」


 誠はそう言うと自分と同じくらいの身長の長身のアメリアに続いて食堂の厨房に足を向けようとした。


「おはようございます。誠様。料理はすでにこちらに用意してあります。一緒に朝食などいかがでしょうか?」


 そう声を掛けてきたのはリンだった。銀色の髪を光らせながら自分の隣の席に誠用の精力がつきそうな誠特別メニューが入ったトレーがリンの隣に置かれている。


「なによ!リンちゃん!昨日散々大騒ぎした上に、今度は朝食の場でも誠ちゃんを独占する気?それに昨日もきっちり夜這いをかけようとしたわよね?カウラちゃんが設置したセンサーのおかげで未遂に終わったけど……まあ、かなめちゃんがいつも以上にキレてついに発砲したのには驚いたけど……かなめちゃんそのうち本当にあなたを射殺するわよ」


 アメリアの言葉で誠は夢の中でのサイレンの音と銃声が実際の音だったことを知り驚愕した。


「かなめ姫にも困ったものです。男女の間に武器を持ち出すとは……無粋に過ぎますね。ああ、私の身の安全の事ならご安心ください。私が誠様の精により与えられた干渉空間の防御力はあのような貧弱な火器でどうこうできるものではございませんので。さあ、誠様。お食事が冷めてしまいますよ。一緒に食べましょう」


 リンはそう言うと椅子を引いて誠を迎え入れようとした。その明らかに策謀に満ちた態度に気付きながらも逆らえないところが気の弱い誠らしいところだった。

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