第163話 ちゃぶ台返しをする『関白太政大臣』
「おい!リン!かえで!それ以上神前にくっつくな!神前はアタシの『私有財産』だ!オメエ等のもんじゃねえ!」
誠に寄り添いその身体を舐め服を脱がしにかかるリンとかえでを見てかなめがキレた。
「私は誠様を『アダルトグッズ』として購入しました。ですので、今の誠様は私、個人の所有物です。どう使おうと私の自由です」
そう言ってリンは誠の左手を取ると自分の股間へと導こうとした。
「そうですよ、お姉さま。そして僕はその誠君とは切っても切り離せない存在……当然リンに快感を与え、与えられる関係になる。そして、誠君にも快感を与えることになる……僕はなんと幸せな女なんだろう……」
リンとかえでの誠の服を脱がす動作が雑になっていくのを誠は泣きそうな表情を浮かべて見守っていた。
「こんな契約認めるか!おい!アメリア!こんな出品は無効だ!アタシが認めねえ!アタシは甲武の『関白太政大臣』だ!それが認めねえと言ったら認めねえんだ!すぐにこの取引は無かったことにしろ!これは一国の元首……まあ、甲武の元首は『甲武の御鏡』だが人間の元首はアタシだ!そのアタシの言葉なんだ!何なら運営に言ってオメエのアカウント停止にしてやろうか?アタシにはそのぐらいの政治力は有るんだよ!」
かなめは怒りの矛先をアメリアに向け、その襟首を掴んで引っ張り上げた。
「苦しいじゃないの!かなめちゃん!これは正規の取引……この寮で一番の上官は私!だからその部下は全員私の命令を聞いて当然!上官の命令が絶対なのは軍隊経験の長いかなめちゃんなら分かるはずでしょ?」
アメリアは本気で首を締めにかかるかなめに向けてそう言った。
「その理屈が通用したのはアタシが『関白太政大臣』になる前の話だ。今はアタシは『関白太政大臣』だ。アタシは一国の代表として軍や警察に文句を言う権限がある。つまり、アタシの言葉は甲武を代表するものの言葉だ。取り消せ。今すぐ取り消せ。取り消さないようならそのオークションの運営会社の社長に文句を言ってそこの株式をアタシが全部買い取って会社を乗っ取ってやる!」
かなめはアメリアを天井まで釣り上げるとその首をギリギリと締め付けた。
「死ぬ……本当に……『関白』になって人格変わったわね……かなめちゃん……でも……前金も受け取っちゃったし……」
もがき苦しみながらもアメリアはかなめの命令を無視し続けた。
「そうですよ、前金が渡された時点で契約が成立しています。ですので誠様が私の所有物であるという事実はいかに『関白』といえども取り消せない。では誠様、下着を脱ぎましょうね。ああ、私はこの瞬間をどれほど楽しみにしていたことか」
リンは暴れるかなめと死にかけているアメリアを無視して誠のズボンのベルトに手をかけた。それを争うようにしてかえでも手を貸して誠の肌着を脱がせる。
「アメリア……どうしてもこのオークションを取り消さねえつもりなんだな。残念だったな。オメエはこの場でアタシに絞殺されることが今確定した。安心して地獄に落ちろ」
かなめはそう言うともがき苦しむアメリアの首を絞める右手に力を込めた。そして空いた左手で脇に下がっているホルスターから銃を取り出す。
そんな中、再び誠の部屋の扉が開かれた。




