第161話 本末転倒のオークション
「でも、すぐに11億円の入札があって……ここから高レベルの入札が次々と……何なんです?セレブの高齢女性の『アダルトグッズ』として人生終るなんて最悪ですよ。アメリアさんは人の人生を何だと思ってるんですか?」
誠はカウラの高額入札後も入札が続いていることにあきらめの境地に達していた。
そして同時にこれまで競り合っていたアカウントと明らかに違うアカウントが入札を開始したことに気付いた。
「ああ、そいつ等は地球圏からの違法入札だ。どのアカウントも入札元は地球圏。その時点でアメリアの奴が商品の追加情報に『長期に使用した場合、『光の剣』や『干渉空間』などの法術が使用できることになります。とか入力してるからな。恐らくそれ目当ての地球圏の金持ち女が『魔法使い』になりたくて入札したんだろうよ。連中も物好きだな。そんなに遼州人に憧れてるんだ。神前、地球に行ったらセレブの美女選び放題だぞ。まあ、『アダルトグッズ』である事実は変わらねえけど」
解説しながらもかなめもすでにアメリアの暴走には呆れ果てていた。
「それとだ、アメリア。このアカウントのいくつか……東和国内からの入札だが、このアカウントは全て地球圏の国家の関係機関のアカウントだ。恐らくは神前の野郎の能力を知ってて『アダルトグッズ』としてでなく『法術研究の実験材料』として使用するつもりで入札してるな……オメエ何考えてるんだ?もしこいつ等が落札したらどうするつもりだったんだ?」
かなめの言葉に誠は背筋に寒いものが入った。
「アメリアさん!アメリアさんはそういう連中から僕を守るためにこの寮に居るんでしょ!それが守るどころか売り渡してどうするんですか!」
さすがの誠もそこでは切れざるを得なかった。
「全くだ。20億を超えたあたりからはほぼ個人の入札は無くなって全部東和の地球圏の有力国家の連絡事務所のアカウントから入札がされている、ロシア、アラブ連盟、フランス、イスラエル、ドイツ、南アフリカ……28億で入札したのはアメリカだな」
かなめの淡々と言う言葉に誠は恐怖しか感じなかった。
「そうです、そこでこの危機を回避するべく私は希望落札価格の30億円で誠様を落札したんです。誠様の身の安全を図るためには仕方のない処置だったんですよ。誠様、これは仕方の無い処置……いえ、運命だったのです。ですのでこの運命を受け入れてこれからは私の性生活の充実にかえで様と同じく励んでください」
誠に絡みつきつつ耳元でリンはそうささやいた。
「いえ、そもそもアメリアさんがこんな馬鹿なことを始めなければ何も問題は起きなかったんですよ。その意味わかってますか?」
誠は耳に息を吹きかけ笑顔向けるリンに向けてそう言った。
「さすがリンだ。実にいい仕事をしてくれたね。僕も主人として鼻が高い……いや、今の僕の立場はリンを快楽に導くための『アダルトグッズ』だったんだね。大丈夫だ、リン。僕が君を最高の快楽に全身全霊をかけて導いてあげよう。誠君。僕達は誰にも切り離せない立派な『アダルトグッズ』になろう。そして快楽に身を任せよう」
かえでもリンの反対側から誠の耳を噛みながら上着を脱ぎ始めた。
『この女達は間違っている。根本的にどこかおかしい。僕は人間だ!『アダルトグッズ』じゃない!』
誠はそう叫びたい衝動を必死になって堪えていた。




