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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第三十章 悲劇のヒーローオークション

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第160話 突然跳ね上がった誠の価値

「そうなのよ、誠ちゃんが普通の『アダルトグッズ』とグッズと同じ値段で取引されるなんて許せないから、私は追加情報を入れたの!」


 自分の滅茶苦茶さを棚に上げてアメリアはそう言った。


 事実、5000円台で推移していた入札が、突然100万円台に跳ね上がっている。


「あのー、何をしたんですか?どんな情報を入れるとこんなに急に値段が跳ね上がるんですか?どう考えても不自然ですよね?そう思いませんか?」


 誠にはそれだけを言うことが精いっぱいだった。


「それは、追加情報に私のブログに誘導するようにしたのよ。そこに誠ちゃんの個人情報とか、年収とか、職業は国際公務員だとか、実は結婚機能付きとか、上手く行けば子供まで出来ますとか書いたわけ。この国の女子は80%がモテないことで悩んでるわけじゃ無いの。安定した公務員、長身のイケメン、しかも性格は従順で何でも言うことを聞いてくれる。そう書いたら一気に『アダルトグッズ』ではなく結婚目的のこの国の若い女子が入札を開始したのよ!」


 アメリアはいかにも自分が良いことをしたというような顔でそう言った。


「それってただ僕の個人情報を一般に晒しただけですよね?そんなことをして楽しいんですか?それってほとんど犯罪……というか完全に犯罪ですよね?分かってます、アメリアさんは知っててやってるんでしょ?自分が楽しいから」


 誠はそう言いながら端末の入札履歴を見ていた。アメリアの誠の個人情報を漏洩させた時点から入札は一気に過激化した。


 100万円台が、瞬時に200万、300万と上がっていき、件数も毎分入札があるという激しいセリが展開されたことが記録されていた。


「でもねえ、私もそこで思い直したのよ。この程度の値段で誠ちゃんを手放すなんてどうかなあ……って。そこで別アカウントで入札して一気に値段を跳ね上げたわけ」


 そう言うアメリアの口調に反省の色はまるでなかった。


「そうですか……ありがとうございますと言えばいいんですか?でも、そんなことをしてくれって誰が頼みました?少なくとも僕は頼んでないですよ」


 誠は急に400万円台から750万の入札に跳ね上がったのを見ながらそう言った。


 しかし、次の瞬間誠の表情は明らかに不信感一杯のモノへと変わった。


「でも、その後急に10億円の入札が有りますよね……何をやったんですか?また個人情報を……いや、個人情報を晒したくらいじゃこんな金額が出てくるわけがないじゃないですか!まさか法術関連の極秘資料を付けるとか言い出したんじゃないでしょうね!それって職務規律違反ですよ!アンタには司法局の局員としての自覚も無いんですか?」


 誠にはもうすでにまともな神経を維持する気力すらなくなっていた。


「ああ、それはカウラちゃんの入札。誠ちゃんも見てたじゃないの、カウラちゃんが誠ちゃんを愛車の『スカイラインGTR』を質に入れてでも買いたいって。あの子のアカウントは私も知ってるから代わりに入札してあげたのよ。私って友達思いでしょ?」


 得意げにそう言うアメリアに誠は言葉が無かった。


「そうですね……でも友達思いの人はその友達を本当に売り飛ばしたりはしませんよね。そちらの方の常識を……アメリアさんに期待した僕が馬鹿でした。反省します」


 誠にはそう言うことだけが精いっぱいだった。

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