第157話 お買い得商品の言い分
「誠君はリンの責めを知らないからそんな態度がとれるんだね。リンは本当に僕を最高の気分にしてくれるんだ。そして君も最高の快楽を味わえる。もう普通の生活なんかじゃ満足できない身体になるよ。いや、君と僕はもうすでにリンの快楽を満たすための『アダルトグッズ』なんだ。『アダルトグッズ』にはそんな感情は要らない。ただ、持主に快楽を与え、その持主の与える快楽におぼれる。実に理想的な世界が繰り広げられることになるだろう」
かえではそう言うとベッドの上の誠に絡みついてきた。
「かえでさん、プラトニックラブはどこ行ったんですか?それって自分からリンさんのおもちゃになりたいと志願しているようにしか聞こえませんよ。ああ、そうでしたね。かえでさんはマゾで快楽至上主義者ですものね……でも僕まで巻き込まないでください!」
誠は強く誠に抱き着いてくるかえでの胸に興奮を覚えながらも必死になってそう抵抗した。
「それは僕が人間だった時の話さ。でも君も僕も今はリンの『アダルトグッズ』なんだ。だったら思考を停止して快楽の為だけに生きる。それが『アダルトグッズ』の本分じゃないかな?」
そう言って今度はかえでまでもが上着のボタンに手をかけ始めた。
かえでに何を言っても無駄だ。そう判断した誠は怒りの視線でアメリアをにらみつけた。
「なに?怖い顔しちゃって。でも、これは誠ちゃんが望んだ結末じゃないの。エロゲでも『ハーレムエンド』は良くある話よ。たぶん、かえでちゃんの使用人達も加わるから誠ちゃんは大変かもしれないけど頑張ってね」
アメリアは完全に観察者モードの笑顔でそう言った。
「すべてを始めたのはアンタじゃないですか!アメリアさん!僕は嫌ですよ!それにゲームだってそれは主人公と複数のヒロインとの愛で……」
誠がそこまで行ったところで下着姿のリンが誠に歩み寄ってきた。
「いいえ、これも十分愛のカタチですよ。私はこれから誠様とかえで様を『愛用の品』として愛することにします。これは立派な愛ですよね?」
そう言ってリンは誠に顔を寄せてきた。負けまいと上着を脱ぎ終えたかえでまでもが誠に顔を寄せてくる。
「その愛!歪んでます!そんな愛は要りません!僕が欲しいのは普通の愛です!」
必死になって誠は叫んだ。
「そうですか。でも誠様はもうすでに私個人の所有する『アダルトグッズ』になってしまったんです。しかも、かえで様までもが私が自由にしていい『アダルトグッズ』になった。これは大変いい買い物だと私は思っています。それだけの取引だったクラウゼ中佐の出品者のコメント欄には最上級の誉め言葉を書いておきましょう」
リンはそう言うと誠の顔ギリギリの所まで顔を近づけてくる。
「だから、僕は『アダルトグッズ』ではありません!人間なんです!」
必死に叫ぶ誠にリンは静かに首を横に振った。
「いいえ、オークションでは誠様は『アダルトグッズ』のカテゴリーに出品されていました。ですから、誠様は間違いなく『アダルトグッズ』です」
リンははっきりそう言い切った。
「そりゃあネットオークションに『人間』なんてカテゴリーが無いからでしょ!そんなの無効です!僕は認めません!」
誠がそう叫んだ時、再び誠の部屋の扉が開かれた。




