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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第三十章 悲劇のヒーローオークション

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第155話 『ドナドナ』の流れる誠の脳内

「あのー、お二人とも。何の取引が成立したんです?そのアタッシュケースの大きさからして1億円くらいは言ってそうですね。リンさんがそのくらいのお金を持っているのは不思議ではないんですけど、アメリアさんにそんな金額で売るようなものが有るんですか?何かものすごいコレクションアイテムでも……でもそんなアニメやエログッズにリンさんが興味を持つとは思えないし……なんです?それ?」


 誠は嫌な予感を感じながらアメリアとリンにそう尋ねた。


「ええ、私が以前から所有していた『アダルトグッズ』をネットオークションでリンちゃんが落札したの。ただそれだけの事よ」


 アメリアはあっけらかんとそう答えた。


「『アダルトグッズ』ですか……ふつうそんな恥ずかしい物の取引現場を異性に見せて平気なんですか?アメリアさんは。それにその『アダルトグッズ』とやらはそんなに値の張る者なんですか?」


 あきれ果てたというように誠はそう言うがアメリアにそう言う羞恥心を期待すること自体が無駄なのでその言葉は弱弱しかった。


「それでは、契約条件に合ったように最初の使用時にはクラウゼ中佐にその使用状況と感想を直接お聞かせするということですので」


 そう言ったリンはいきなり立ち上がると上着のボタンに手をかけた。


「リンさん……なんで服を脱ぐんです?それとその『アダルトグッズ』ってどこに有るんですか?そんなもの僕の部屋にはありませんよ。そう言う物なら島田先輩の部屋にでも行けば有るんじゃないですか?まあ、あの人の持っているものはたぶん男性にしか使えないものしか無いと思いますけど」


 誠は服を脱ぎだしたリンに向けてそう言った。


「いえ、この部屋にしかその『アダルトグッズ』は有りません。お分かりになりませんか?」


 リンは上着を脱ぎ終えるとそのままシャツのボタンに手をかけた。


「リンさん!また夜這いですか!しかもアメリアさんがここに居るんですよ!アンタは何を考えているんですか!」


 服を脱ぐリンに向けて誠は絶叫した。


「そりゃあ、『アダルトグッズ』として私が出品したのは誠ちゃんだもの。というわけで、これからは勤務時間以外は誠ちゃんはリンちゃん所有の『アダルトグッズ』になる訳よ。分かった?だからこれからの誠ちゃんの私生活は常にリンちゃん専用『アダルトグッズ』であることが求められるわけ。リンちゃん、契約事項にも有ったように時々私にも貸してね」


 アメリアはいい笑顔を浮かべて誠に向けてそう言った。


「アメリアさん!アンタは何を考えているんですか!僕は人間ですよ!『アダルトグッズ』じゃありません!それに今言ってた話だと僕の私生活は全てリンさんの性活動に捧げろって言う話ですよね!そんなの嫌ですよ!」


 いつもは穏やかな誠も湧き上がってくる怒りに耐えかねてそう叫んでいた。


「だって、ネットオークションで哺乳類の売買は禁止されているじゃない?だからジャンルとして『アダルトグッズ』として出品したのよ。結構な競り合いになったけど、いきなり希望落札価格を入札してきたリンちゃんが落としたわけ。と言うわけでリンちゃん。初使用楽しんでね」


 アメリアは誠の都合などまったく無視して自分の都合だけでそう言い切った。


「はい、いつもは誠様のモノは模型しか使ったことが無いので実物を楽しめるということで今から興奮しています」


 リンはそう言ってシャツを脱ぎだした。


「アメリアさん!問題が根本的におかしいでしょ!なんで僕が売られなきゃならないんですか!いつから僕はアメリアさんの所有物になったんですか!」


 必死に誠は抗弁する。


「だって、この寮で一番階級が高いのは私。軍は階級がすべて。部下は上官の所有物。だから誠ちゃんも私の所有物。売り買いをしても別に倫理的に何の問題も発生しないわよ。ささ、リンちゃん。『アダルトグッズ神前誠』。十分に楽しんでね♪」


 いかにも楽しそうにアメリアは言った。


『いつから軍隊では部下を売り買いして良いという軍規が出来たんだ?というかうちって『武装警察』じゃなかったっけ?そもそも部下を売り買いして良い会社とか役所があるなんて……ああ、芸能界には『枕営業』とかあるからあの世界はそうなのかもしれないな』


 シャツを脱ぎ、スカートに手を伸ばす銀色の髪の輝くリンを見ながら誠は脳内に『ドナドナ』が無限ループするのを聞いていた。

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