第152話 アメリアの部屋の秘密
「突然だな……まあ子供じゃ無いんだ自分で帰れるだろ」
カウラはそう言って苦笑いを浮かべる。
「麗子はいつもそうだ……まあそんな奴に付き合うアタシもアタシだな。でもアイツが妻か……まあ、ホテルでやってることは変わらねえからそれでいいか」
かなめはそう言いながら皿に残されたシシトウに手を伸ばした。
「かなめちゃんも勝手だけど麗子さんはそれ以上に勝手ね。飲み会は最後まで付き合う!それが常識じゃないの?」
アメリアはいかにも不満そうにそう言ってネギまを口に運んだ。
「まあな、アイツはわがまま放題に育てられたから。すべて『徳川譜代』の連中が悪いんだ。オメエが本局でアイツに変なことされてもそん時はアタシじゃなくて『徳川譜代』の連中を恨め」
かなめはそう言ってラムを飲んだ。
「貴様もわがまま放題に育てられたんじゃないのか?まず、日野を犬扱いしている時点でどうかしている。いくら姉だと言ってもそんな事をするのは犯罪者だ。たとえ、日野がそれを望んだとしてもそれは貴様がそのように日野を歪めたということだ。少しは反省しろ」
カウラの問いにかなめは大きくため息をついた。
「アタシがわがままに育てられただ?アタシは結構お袋に気を使ってたんだぜ……それに家の居候と遊ぶのにもそれなりに配慮はしてたし……どこがわがまま放題なんだよ。言ってみろよ、その証拠を」
かなめは明らかに動揺しながらそう言い返した。
「本当に?居候に関しては一方的に虐めてたんじゃないの?かえでちゃんみたいに。かえでちゃんは虐められて喜ぶから良いけどね。ねえ、かえでちゃん!」
かなめの言葉にアメリアは食いついた。
「はい、僕にとってかなめお姉さまにぶたれたりけられたり裸にされて庭の木につるされるのは最高の喜びでした。今でもしてもらいたいくらいです」
ドMの変態であるかえでは頬を赤らめながら妖艶な目つきでかなめを見つめた。
「私もかなめさんの家に始めて言った時に縄で縛られて首輪をつけられて全裸で庭に放り出されて笑顔を浮かべているかえでさんには驚きました」
響子もまたかなめのかえでへのかえでが望むドメスティックバイオレンスの現場を目撃したらしく困惑した顔でそう言った。
「まあ、西園寺姉妹が変態なのは周知の事実として……それにしても田安麗子中佐……お高く留まってて疲れる人ね」
アメリアはそう言って一同に笑いかけた。
「そうだな。アメリアはお高く留まってはいないからな。はっきり言う。貴様には夜中貴様が上げる変な声で何度起こされたことか……正直に言おう。貴様は下品だ。日野の文句を言う資格は貴様には無い。貴様こそ本当は西園寺に日野のように扱われることを望んでいるんじゃないか?立派な変態だな」
カウラはエロゲの実演と称して夜中に変態行為に走るアメリアに向けて強くそう言った。
「なによ、カウラちゃん。私は疲れるって言いたいの?それにあれでも結構声は押さえてるつもりよ。カウラちゃんが眠りが浅すぎるのよ。今度、『パチンコ依存症』の治療の為に通ってるカウンセラーの人から心療内科でも紹介してもらって睡眠薬でも処方してもらえば?」
アメリアはカウラの非難などどこ吹く風でビールを飲んでいた。
「アメリアがうるさいのはアタシも思ってた。アタシもあれくらいの声は出すが寮でするときは口に何かを噛んで声を出さないようにしてる。オメエもそれをやれ。神前を調教しようと思って買ってあったギャグボールが部屋にあるから、それをやる。今日からそれを使え」
かなめは意味ありげに薄ら笑いを浮かべる。
「でもそれじゃあエロゲのエロさが再現できないじゃないの。声を出してスケベな声をあげるからエロゲは盛り上がるんじゃないの。ギャグボールなんかしてたらつまらないわ。かなめちゃんは勝手なことばかり」
カウラとかなめにいじられてアメリアは不貞腐れた。
「それはオメエの趣味だろうが!なんでそんなことでアタシやカウラの睡眠時間が犠牲にならなきゃいけねえんだ!」
アメリアの態度にキレたかなめが怒鳴り始めた。
「じゃあ、お金を払えばいいんでしょ!最近は売り上げが伸びてるから迷惑料くらい出してあげるわよ!それに今日大金が入るめどがついたし」
アメリアが最後に行った事の意味に誠は首をかしげながら巻き込まれまいと黙ってビールを飲んでいた。
「かなめさん、かえでさん。楽しそうな職場ですのね。少し羨ましいですわ」
響子はこの『特殊な部隊』の醸し出す独特な雰囲気を好意的に受け止めているようで、笑顔でそんなことを口にした。
「響子さんもそう思うかい?ここは最高の職場だよ。ただ、僕にとっては『許婚』である誠君と一緒に居られることが一番の幸せなんだけどね」
二階に上がってきたお蔦の手からいつのまにかアメリアが注文していたビールのジョッキを受取りながら殿上貴族とは思えない気の利き方で立ち上がってそれを受け取った響子の顔には笑顔が浮かんでいた。
誠もまた苦笑いを浮かべながらアメリアとかなめのやり取りを眺めていた。




