第15話 自分はまともな神経の持ち主だと主張する夜這い女
「そんなものを用意していたのですか……でも皆さんは私を甘く見ていますね。私は長年、かえで様の家宰として多くのかえで様の無茶を揉み消したり後押ししたりしてきた女ですよ。そんな子供だましが通用すると本当にお考えなんですか?そんなものは甘すぎて話になりません」
いつもの無表情ながら振り向いたリンの目には自信がみなぎっていた。
「なんだ?その面。オメエは所詮かえでのおまけじゃねえか。それ以外の何がオメエに有るんだ?言ってみろよ。うちに来たのだってかえでのおまけとしてだろ?自分の分際を考えろ。それにあれだろ?かえでが神前と結婚するとかえでは一回しか出産したくないって言うからその代わりに餓鬼を作るのがオメエの役割だろ?だったらその時まで待てばいいじゃねえか。そん時にいくらでも神前の餓鬼を作るためについでにお楽しみにふければいい。まあ、アタシがそんなことを許すほど甘い女じゃねえのはオメエでも分かるだろうがな」
かなめは鳥刺しをつまみにラムを飲みながらそう言った。
「いいえ、そんなことではありません。誠様はまともな神経の女性とお付き合いしたいとお望みです。残念ながらここに居る女性でまともな神経の持主は私しかいません。ですので誠様はどう考えても私を選ぶことになります。かなめ様。あなたは自分がまともな女だと思っているのですか?まともな女が常に銃を携帯して事あるごとに『射殺する』と連呼するなんて言うことはしませんよね……ちがいますか?違うのならその一般的にそう言う女が普通に居る国の名前を挙げてみてください」
いつもの無表情のままでそう言うリンだが、かえでと同じくこちらは対抗してビンテージものの白ワインを飲んでいる口元には余裕の笑みが浮かんでいた。
『あのーリンさん。毎晩夜這いをかけてくる女性のどこがまともな神経の持主なんでしょうか?それこそそれが一般的な国が有ったら僕に教えて欲しいんですけど』
誠は夜中ほぼ全裸で誠の布団にもぐりこんでくるリンの被害に遭っているので口には出さないがそう思っていた。
「へー、毎晩夜這いをかけるのがまともな神経の人がやる事なんだ。知らなかったわ……それに私のどこがまともな神経じゃ無いというのかしら?ちょっと趣味が多くて悪ふざけが過ぎるだけじゃないの。これは人生を豊かにするスパイス。退屈な女より私と付き合う方が誠ちゃんが幸せになれるのは確実よ!エロい事しか考えられない主人を持つと家臣もエロい事と屁理屈しか言えなくなるのね」
誠の言葉を代弁するようにビールを飲みながらアメリアが嫌味を言った。




