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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十八章 『将軍様』と竹馬の友

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第144話 密かな悪だくみは続いていた

 大暴れしたかなめが落ち着いてなんとか場は元の雰囲気に戻った。


「そう言えば、アメリア。さっきからずっと気になっていたんだが、貴様はさっきからなんで時々携帯端末をチェックしているんだ?今私達は歴史的な瞬間に立ち会っている。その事実を目の前にしても貴様はだんまりだ。何か気になる事でもあるのか?」


 カウラは騒動が終わるとすぐに携帯端末に目をやっていたアメリアに尋ねた。


「そんな甲武の歴史なんて私みたいな庶民とは関係ない話じゃない?それにたぶん任務で甲武に生きそうな雰囲気があるなあ……ということさえわかれば私はそれで十分だもの。それよりちょっとネットオークションに出してる『品物』があるのよ。宇宙に一つしか無いレアな存在だけど1円からの出品ということで結構人気になっちゃって……さっき希望落札価格で終了したんでその落札者と商品の受け渡しとかで交渉してたの」


 アメリアは何事もなかったかのようにあっさりとそう言った。


「全く歴史的瞬間よりネットオークションが大事とはいかにも貴様らしいな。貴様はお笑い関係やとても人前では言えないような卑猥なレアグッズとかを集めるのが趣味だからな。あれか?またアニメグッズか……いや、あれは大量生産されているからレアグッズとは言えないな。20世紀製造の落語のCDなんかか?しかし、経年劣化で聴けたものでは無いだろ?そんなものを持って何が楽しいのやら」


 カウラは呆れたようにレバーを口に運んだ。


「違うわよ。『アダルトグッズ』。たぶんカウラちゃんも興味があるんじゃないかなあとか思っちゃう品物。宇宙に一つしか無い高機能高性能の一品でその性能はまだ試したことが無いけど見た感じ折り紙つきよ。しかも入札条件に『女性限定』と付けたから。しかも、落札者はそのアダルトグッズが知ってる人だから、アダルトグッズ本人も安心よね」


 アメリアは糸目をさらに細めて笑顔を浮かべて誠を見た。


「あのー、『アダルトグッズ本人』ってなんです?オークションって僕もよく使いますけど動物の売買は規約で禁止されてるはずですよね。意味が良く分からないんですけど……」


 誠はなぜアメリアが自分を凝視しているのか分からずにそう答えた。


「いいのよ、誠ちゃんは知らなくても。知らない方が都合が良いし。そのうち嫌でも分かるし」


 アメリアは謎めいた言葉を残すとビールを飲み干した。


「クラウゼ中佐。落札金額の件ですが、今日前金を渡すということでよろしいですか?」


 そうアメリアに言ってきたのはたぶんかえでの運転手として同行してきたリンだった。


「うん、お願いね。たぶんあれを見たら本人も納得してもらえると思うから。それより、いきなり即決なんて凄いわね。もう少し競るかと思ってたのに」


 アメリアはそう言ってリンに話しかけた。


『アメリアさんの『アダルトグッズ』をリンさんが落札した……まあ、リンさんは性欲のお化けだからな。これで毎晩リンさんから夜這いをかけられる日々から解放される訳か……それはそれでちょっと寂しい気がするな』


 誠は何も知らずにそう言いながら豚串を食べていた。


「ネットオークションねえ……そんなもんただのトラブルの元だぞ。運営のしっかりした地球系の伝統あるオークションしかアタシは使った事ねえからな」


 いかにもお嬢様発言をするかなめは落ち着いた様子で葉巻をくゆらせていた。


「僕もネットオークションには関心が無いんだ。そんなに楽しいものなのかい?」


 かえでは興味深そうにアメリアに尋ねた。


「楽しいわよ。たぶんこの出品物は1円で出品した時点でかえでちゃんが見たら私が出したとんでもない額の希望落札額で落とした上にお礼として数倍のお金が私の所に入ってくるはずだったんだけど……仕方ないわね。落札したのはリンちゃんだもの。何なら時々『その『アダルトグッズ』をリンちゃんに貸してもらえば?私も貸してもらうつもりだし、そう言う契約にしておいたから。心の広いリンちゃんなら貸してくれるかもよ」


 アメリアはニヤニヤしながらかえでの方を見つめた。


「落札したのは私です。そのグッズは私の最愛のグッズになるでしょう。残念でしたね、かえで様。ただ、どうしても使用したいというのであれば格安でお貸しできますよ」


 リンは静かにそう言うと含みのある笑みを浮かべてかえでを見つめた。


「お金を取るのかい?その点はきっちりしているのはリンらしいと言えるかもしれないね。リンが気に入るということはその『アダルトグッズ』は僕にも相性が合うだろう。ぜひお願いしたいものだ」


 かえではそう言ってリンに笑いかけた。笑いあう二人を見ながら誠は何とも理解しがたい嫌な予感に苛まれていた。

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