第14話 野次馬たちのいちゃもん
「かえで、無理なもんは止めちまえ。というか、なんでいつもオメエが神前の隣に座ることが決まったんだ?後から来て勝手なルールを作りやがって。神前だって明らかに顔が引きつって珍妙な表情を浮かべてるぞ。オメエから性犯罪者の要素を抜いたら何が残る?顔が良い?アタシの妹なんだから当然じゃねえか。スタイル抜群?それもアタシの妹だからだ。経験は……最初にその経験を与えてやったのはアタシだ。つまりアタシのおかげでオメエは人並みになれたんだ。そのオメエが姉であるアタシを差し置いてアタシの持ち物である神前の隣に座って平然とした顔をしていやがる……いちいち気に食わねえ」
いつものように葉巻をくゆらせ愛飲するラム『レモンハート』を飲みながらかなめはかえでに向けてそう言った。
「僕から性的なことを抜いても多くの知識と洞察力、そして先見性が残る。これはお姉さまから与えられたものでも遺伝としてお姉さまも持っているものでもなく僕自身が努力で手にした僕だけのものだ。それよりお姉さまにはその『女王様』としての男を辱めるテクニックと銃を除いたら何が残るのかな?結局、その先送りの性格と努力嫌いが何の進歩も無く『永遠の子供』を作り出しただけなんじゃないかな?何も性的関係だけが大人の関係じゃないんだよ、お姉さま」
かえでも負けずにかなめに向けてそう言い放った。
「なんだとこら!テメエのどこに洞察力や先見性が有るんだ?見境なく女に手を出してランの姐御も完全にキレてたぞ!洞察力や先見性がある人間が上司をあれだけキレさせるか?そんなことねえだろうが!それに今朝の叔父貴の呼び出しだってどうせオメエのまいた種で神前が迷惑するって話だろ?そんな奴には神前は渡さねえ!オメエの口先だけの努力なんてアタシは認めてねえからな!」
かなめはそう言うと怒りのあまりに立ち上がろうとするが隣に座るアメリアが何とか押さえつけた。
「大丈夫よ、かなめちゃん。そのうちかえでちゃんが自爆するのは目に見えてるんだから焦る必要なんてないわ。それより問題はリンちゃんね。あの子の毎日の夜這い対策。カウラちゃん……ちゃんと見張りは……」
「大丈夫だ。渡辺が私の部屋の前を通ると自動的にサイレンがなる装置を導入した。今日からは不寝番をせずに済む。しかし、渡辺の奴までもが独自行動で神前を狙いに来る事態になるとは……これは困ったものだ。本当に私は困っている」
カウラはそう言ってネギまを口に運んだ。その声が気になって振り向いた誠の目に映ったその視線はどこか寂しげで、誠の心を揺さぶるような何かがあるように誠には見えた。




