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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十七章 3月4日の政変

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第139話 政変の意味するもの

「かえでさんに差し出された筆で名前を書くというのは癪ですわね」


 そう言いながらも麗子はうっすら笑顔を浮かべて巻物を手に取り慣れた手つきで誠には読めないような文字で署名を済ませた。


「あのー何を書いてるんですか?」


 誠は緊迫した雰囲気に耐えられずにそう口にしていた。


「あれでしょ、『新田朝臣右大臣麗子』と署名したんでしょ。これでかなめちゃんが『藤原朝臣太政大臣要子』と署名し、それに見届け人として隊長が『藤原朝臣内大臣惟基』と署名すればこの巻物は甲武の公的書類としての意味を持つことになる。その意味はかなめちゃんを関白太政大臣にするということ。この文書の力は宰相であるかなめちゃんのお父さんの宰相西園寺義基にも逆らうことが出来ない」


 アメリアは冷静にその巻物の意味を誠に説明した。


「しかし、いいのか?西園寺。このことで貴様は甲武の最高責任者となる。これまでのような自由は効かなくなるぞ」


 カウラは警告するように真剣な表情でかなめに向けてそう言った。


「別にどうってことはねえよ。自由が効かなくなるだ?そんなこと誰が決めたんだ?アタシは甲武のすべてを握る関白になるんだ。決めるのはアタシ。アタシが自由にしたいと言えばそれは絶対的意味を持つ。別にアタシが何か変わるわけじゃねえ」


 麗子から受け取った筆で巻物に署名をしながらかなめは平然とそう言って笑った。


「これですべて済んだわけだ。お姉さま。これであなたは関白です。その自覚を……持ってはいないようですね」


 かえでは諦め半分に巻物と筆を嵯峨に渡すなり葉巻を取り出して火をつけ始めたかなめにそう言った。


「親父がやりてえのは身分制の破壊だろ?だったらその娘であるアタシがその関白の地位に泥を塗った方が親父には都合がいいはずだ。アタシはアタシの好きにやる。まあ、関白になっちまった以上毎年『殿上会』に出るのが義務になるわけだが……ここでもアタシはアタシ流でやる。その方がアタシとしては面白いだろ?そう思わねえか?」


 葉巻をくゆらせながらかなめはそう言って不敵な笑みを浮かべて周りを見回した。


「かなめ坊は若いね。そんなに関白の地位は自由に出来るもんじゃないよ。自由にやりたかったら頭を使うもんだ。俺は頭がいいから面倒な地位にあっても責任をすべて大嫌いな遼帝国宰相のあの男に押し付けて自由にやってる。甲武の関白は俺と同じでそう言う風な仕組みを自分で作れる権限を持つ地位なんだ。今まで通りの自由が欲しければ頭を使いなよ。似たような地位にある俺が自由でいられるという経験上助言できるのはそんなところかな?」


 署名を済ませた嵯峨はそう言って巻物をかえでに手渡した。


 誠達は歴史的瞬間に立ち会うことになったこととそのあまりにあっけない幕切れに唖然としていた。

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