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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十六章 『将軍様』と焼鳥

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第132話 将軍家と関白太閤殿下と『甲武の鬼姫』

「そんなことよりずっと気になってたんすけど」


 ビールを飲み終えた誠がゆっくりと手を挙げた。


「なんだよ婚約者」


 かなめは誠をただの麗子との結婚が嫌だからという理由で完全に自分の婚約者にする気満々だった。


「田安ってそんな幕府聞いたことが無いんですけど……鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府の三つが有る事は僕でも知ってます。でも田安幕府なんて聞いたことが無いですよ?」


 誠の突然の発言にかなめはため息をつく。


「あのなあ……甲武には徳川なんて言う貴族はごまんといるんだ。アタシが修学院女子に行ってた時クラスのうち十人は徳川か松平なんだぜ……学年によっては半分の本当の名字が徳川なんてことが有る。誰が誰だか分かんなくなるだろうが。それに、徳川・松平の連中の間でもその出自によって差が有るんだと言い張ってお互い自分こそ格上だと示して見せる必要がある。だから区別つけようとするんだ。第一武家貴族の三割は徳川か松平の出なんだ。そんなの区別付けなきゃ……訳がわかんねえだろ」


 かなめの言葉を聞いても誠はまだ納得できないでいた。


「そうですわね。紀伊、尾張、水戸の御三家と田安、一橋、清水の御三卿は甲武に末裔がそろってますものね……他にも松平をいれるとそれはもう大変な数の徳川・松平家がありますもの。かなめさんも妻らしく……いや、田安高家の三女の血を引くのですから徳川の家の一員としてよいことを申されますのね」


 麗子は根拠のない自信のある笑顔を浮かべてそう言った。


「確か徳川家康って子だくさんだったわよね。さらに徳川吉宗とか徳川家斉とか子だくさんの将軍がいっぱいいて……それで他の武家の大名を次々取り潰して滅亡させていった。まるで今かなめちゃんがやってる事みたい」


 アメリアは麗子の言葉を継いでそう言った。


「大体日本の苗字なんてそれ言い始めたら『源平藤橘』でほとんど占めてんだ……まあ東和の庶民のオメエには関係ねえがな」


 かなめはあきらめたようにそう言うとため息をついた。


「でもまあ複雑なんですね、甲武は……でもなんでしたっけ?関白太政……」


「関白太政大臣!記憶力ねえのか!テメエは!」


 感心した様子の誠をかなめが怒鳴りつける。


「怒鳴んなくなっていいじゃないですか……その関白とかは何をするんですか?西園寺さんのお父さんが宰相をしてるんでしょ?あの国」


 誠はかなめの父が甲武の宰相をしていることだけは何度も聞かされていたので政治をやる宰相が居るのになぜ『征夷大将軍』や『関白太政大臣』が必要なのか分からなかった。そんな不思議な生き物を見る目の誠を見てかなめも麗子も呆れたようにため息をついた。


「あのなあ。宰相は誰かに任命されてやるもんだ。あの国には皇帝はいないから代わりに貴族のすべてを取り仕切る関白がそれを任命する制度になってるんだ」


「そうですわ。左大臣は外交に関する大臣を任命し、右大臣は陸海軍の将軍を任命する。そして内政に関しては内大臣がそれを担当する。これは甲武の常識ですわよ。あなた、かなめさんの婚約者だというならそのくらいの知識もないなんて……やはりかなめさんの夫にふさわしいのはこの宇宙に私一人。これは運命なのですわ!」


 かなめと麗子が立て続けにそう言った。



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