第12話 プレイガール……すなわち『変態』
「お姉さまはいつもギリギリまで宿題はためておくタイプなんだね。その所は直した方がいいと前々から言って有ったじゃないか。今日も、誠君は僕の車で行くんだろ?そこでいつものプラトニックな愛を語らう時間を一緒に過ごそう」
そう話しかけてきたのは結局一日中ランから説教されていたかえでだった。しかし、誠にはかえでが反省をしているような様子はまるで見えなかった。
「ええ、まあ……でも良いんですか?女性に声をかけるのはかえでさんの趣味ですよね?」
ランの小言に反省しているか試すように誠はかえでにそう言ってみた。
「僕は君とのプラトニックラブを生きることを決めたんだ。そしてクバルカ中佐は一途な愛こそが大事なんだと言っていた。僕は君一筋に生きる。だから君も僕の愛に応えてくれたまえ……まあ、僕の家臣達を愛するのは構わない。それは僕自身への愛の一つと僕は考えている。まあ、僕も彼女たちに愛されるのが何よりも楽しみなのだからね」
かえでは情熱的な視線で誠の手を強く握るとそう言い切った。
「プラトニックラブですか……かえでさん……その言葉の意味分かってます?しかも、その家臣達とはいつも人にはとても言えないようなことをしてるんでしょ?それってただの変態って普通は言うんですよ」
その圧倒的な圧に押されて誠は思わずそう言っていた。
「そうだ。性的な欲求不満は全てリンたちに解消してもらう。それを変態と呼ぶならそう呼ばせておけばいい。僕は喜んで変態と呼ばれよう。それに家臣達との営みを続けることで女性からの誘いを断るという線でクバルカ中佐には納得してもらった。僕の性欲についてはクバルカ中佐もよく理解してくださっている。これからは不特定多数の女性に声をかけたりなどしない!『許婚』である君の為だけに僕は生きる!」
力強く右腕の拳を握りしめながら誠を見つめてかえではそう言った。
「おい、それでも十分プラトニックラブじゃねえぞ。ただの爛れたオメエの脳内が余計爛れるだけだ。オメエは変態と呼ばれたいと言ったな。じゃあ何度でも言ってやる。変態、変態、救いようのないド変態」
妹のかえでの言葉にため息をつきながらかなめは星間便の送り状を段ボールに張り付けた。
「大丈夫です。かえでさま。これまでより激しい責めになりますが、きっとかえで様のご期待に応えて見せます。すべてはこのリンにお任せください。かえで様の変態性にさらに磨きをかけてかえで様ご自身が望むような立派な変態にして差し上げます」
かえでの副官渡辺リン大尉はそう言うといつもの無表情でかえでを見つめ、そしてすぐさま熱い視線を誠に送って来た。
「まあ、リンさんがそう言うなら……というかかえでさんそんなに変態になりたいんですか?『許婚』の僕としてはあまり変態すぎる人とは付き合いたくないんですけど」
誠は納得すべきなのかそれとも戸惑うべきなのか困惑しながら端末の電源を落とした。
「そうかい?でも、誠君。口元が少しニヤケているよ。僕が何処まで変態な妻となるか君も楽しみにしているんじゃないかな。しかもその成果を確認できるのは君一人だ。僕は君の為により変態になることをここに誓おう」
『そんなこと誓われても……正直困るんですけど』
誠は完全に誠を変態女が理想のエロゲの主人公と同一視しているらしいかえでの脳内に一抹の不安を感じていた。




