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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十四章 『将軍様』となじみの店

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第118話 接待の特権経費で飲み食い

「じゃあ行くぞ……麗子と沙織はパーラの車に乗せてもらえ」


 そう言うとかなめは機動部隊詰め所を後にする。誠も置いて行かれまいとその後ろに続いた。


「じゃあ着替えてきますね!」


 誠はそれだけ言って小走りに隊舎の奥にある男子更衣室に向かった。


「でも……西園寺さんと違って典型的なお姫様って感じだよな……というか次元が違いすぎる、脳内の。同じように豪勢な暮らしをしているかえでさんだってもう少し庶民の暮らしを知ってるぞ。甲武の偉い貴族の人って本当に世間知らずなんだな。他国の事ながら心配になってくるぞ」


 独り言をつぶやきながら男子更衣室に入ると定時とあって混雑していた。


「おい、神前。あの馬鹿で偉そうな中佐のお守、大変だな」


 古参の整備班の下士官が誠に声をかけてくる。


「これから月島屋に行くんですよ……なんでもお姫様過ぎて焼鳥とか食べたことが無いみたいで……」


 誠はネクタイを緩めながらそう返した。


「甲武の肉はまずいらしいからな。うちの西。アイツは甲武出身だけど……肉見ると涙を流して喜ぶぞ。そんなに肉が珍しいのか?甲武は。西園寺さんも日野少佐も渡辺大尉も別にそんな反応してないけどな」


 下士官はネクタイを緩めながらそう言って誠に笑いかける。


「まあ、西は平民だからそうなんでしょ。それに西園寺さんやかえでさんの生まれた西園寺家は質素倹約を旨としているらしいですから豪勢な肉はあまり食べないらしいですよ」


 下士官の冗談に誠は少しばかり辟易した笑みを浮かべた。


「おう、神前居たのか」


 更衣室にデカい態度で島田が入ってくる。


「島田先輩は今日行くんですか?月島屋」


 ワイシャツを脱いでジャケットを羽織りながら誠は島田にそう尋ねた。


「誰があんなお高く留まった姉ちゃんの接待なんか行くかよ……『武悪』のメンテがあると言って俺は逃げることにした。しかし、あのねーちゃん大丈夫なのか?甲武の貴族らしい貴族って言えばうちじゃあ日野少佐だけど、あの人はオメエの護衛を始めるまでは月島屋にはめったに近づかなかったじゃねえか。甲武の貴族は庶民の暮らしなんか興味ねえんだろ?」


 白いつなぎを脱ぎながら島田はそうぼやく。


「そうでも無いみたいですよ。日野少佐は庶民の暮らしを知ってるからあえて近づかないところがあるみたいですけど、田安中佐は全く知らないから逆に興味があるみたいで……」


 誠のつぶやきに島田はあいまいにうなずいた。


「そんなもんかね……まあ神前も大変だな。あの姉ちゃんの頭のネジはうちで一番器用な西でも絞められそうにねえや。せいぜい、いつものランの姐御に気を使って安いメニューを選んでるお前だもんだ。今日は経費で飲めるんだ。腹いっぱい旨いもんを食ってやれ。あそこの鳥刺し。あれは絶品だからな。値段が高いけど」


 フライトジャケットを羽織りながら島田はそう言ってニヤリと笑う。


「経費なんですか?」


 誠は驚いたようにそう言った。


「当たりめえだろ?本局の偉いさんを接待するんだ。きっちり交際費で菰田の野郎に請求してやれ。あんな馬鹿と飲みたくもない酒を飲むんだ。経費で落ちなくてどうするよ」


 島田の悪い笑みを見て誠は苦笑いを浮かべた。


「接待ですか……」


 誠はその言葉の響きに自分が社会人になったことを実感して軽く感動を覚えていた。


「そう、庶民の味を教えてやるのも接待だ……飲み食いするだけじゃなくて授業料を取りたいくらいだ」


 手早く着替えを終えた島田はそう言って誠の肩を叩いた。


 二人はそのまま更衣室を出ると下に降りる階段を進み隊舎を出た。

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