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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十四章 『将軍様』となじみの店

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第117話 将軍様月島屋へと向かう

「麗子、良いとこ連れてってやんよ。神前の取り扱いについてはそこで話そうじゃねえか。あそこなら落ち着いて話が出来る」


 かなめは笑顔で麗子達にそう言った。


「良いところ?まあ、東和に疎い夫である私を案内するというのは妻としては当然の務め。素敵なことですわね、かなめさん」


 不思議そうに自分を見つめてくる金髪縦ロールのかつらを気に入った麗子にかなめは得意げにほほ笑む。


「そうだ良いところだ。うちの部隊の隊員なら誰でも行ったことがあるところだ。あそこはたぶんオメエにはちっと珍しいところかもしれねえがそれもまたいいもんだぞ」


 かなめは月島屋なら常識の有る女将の春子が麗子の異常な物言いを訂正してくれるのではなかろうかという計算が誰にでも見て取れるような狡い笑顔を浮かべてそう言った。


「そこなら行きましたわよ。お寿司屋さんですわよね。あそこはネタが新鮮で……東都でも何度か甲武には無い冷凍以外のネタの寿司は何度か食べましたが、あそこほどいいネタに恵まれたお寿司屋さんは行ったことが有りませんわ。さすが私の妻。良いお店をご存じなのですね。お付き合いいたしましょう」


 頓珍漢な麗子の答えにかなめは呆れたように頭を掻く。


「寿司屋だ?そんなところじゃねえよ。あんな金のかかるところに通ってるのはランの姐御位だ。姐御は食通だからな。そんなのとアタシ等を一緒にするな」


 かなめは不服そうにそう言うがすぐにその表情はいたずらめいたものに変わった。


「それじゃあどこかしら?夫にふさわしい食を用意するのが妻の務めでしてよ」


 相変わらず自分を妻扱いして来る麗子の言葉を聞こえないふりをしてかなめは言葉を続けた。


「麗子、一応確認しておくが、オメエは焼鳥の存在は知ってるよな?」


 かなめの誠からすれば当たり前の問いに麗子はしばらく首をひねる。


「焼鳥……聞いたことがありますわねえ。甲武の屋敷の下働きの者達がよく行くところだと聞いておりますわ……でもそれが何の関係がありますの?少し理解しかねるんですけれども……」


 麗子は不思議そうな顔で気に入った金髪縦ロールのウィッグを弄りながらそう言った。その口調からして麗子は焼鳥そのものを見たことが無いのだろうと誠は思った。


「さすがお姫様、下々の所には近づいていっては頓珍漢なことを言うのが定番ですものね」


 ピント外れの麗子の答えにアメリアは思わずそうつぶやいていた。


「あれだ、甲武と違って東和の焼鳥は生きてる鶏を絞めて出す。合成肉とは違ってけた違いに旨いぞ……どうだ、甲武じゃ食えねえ旨い肉だ。興味あるだろ?オメエ、アタシンちのサンマが好きだったじゃないか。たぶん同じ気分をあそこに行けば味わえる」


 かなめはまるで自分の手柄のようにそう言って見せた。


「甲武でも地方のコロニーに行くと鶏を飼ってますから食べられますよ……焼鳥」


 鳥居はそう言って抗議するがかなめはまるで興味が無いというようにスルーした。


「麗子は乳母日傘で育ったから地方になんて行ったことねえの!まあ、アタシは御所で居候質が闘鶏用に軍鶏を飼ってたから軍鶏鍋とかよく食ってたけどな」


 かなめはそう言って自分の話に茶々を入れてきた鳥居を威嚇した。


「かなめちゃん……本当にそんな時代劇みたいな暮らししてたのね……庭で軍鶏って……かなめちゃんの実家は何時代?」


 かなめの『軍鶏鍋』の言葉にアメリアはそうツッコミを入れた。


「田安中佐、あそこは庶民の店ですからきっと初めての体験がいっぱいあると思いますよ。僕からもお勧めです」


 とりあえず誠は総まとめに入った。


「誠様がそう言うなら……それにあのサンマに似たような素敵な庶民の味……興味ありますわ。なるほど、それは妻としての夫への気遣いということですわね。良い妻を持った私は幸せですわ」


 麗子もようやく納得がいったかのようにそうつぶやいた。



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