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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十三章 『将軍様』と悪ふざけ

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第116話 将軍様、悪役令嬢になる

 誠、かなめ、カウラの三人の後ろをついてくる麗子は自分がどんな接待を受けるのかが楽しみらしく、お付きの鳥居と一緒に小声でささやきあっていた。


「でも……田安中佐は貴族でしょ?焼鳥とか口に合うんですか?かえでさんがうちに来た時も月島屋にかなり驚いていたじゃないですか。かえでさんはリンさんに出会った岡場所とかにも出入りしてたからそう言う予備知識は多少はあったでしょうけど、たぶん田安中佐はそんな知識はゼロの典型的な将軍家のお姫様ですよ……いいんですかね、あの店で」


 誠は心配そうな顔でかなめを見つめた。


「アタシも貴族……というか家格はアタシの方が上だ。まあ甲武じゃアタシも焼鳥は食ったことがねえんだ。有るらしいぞ、甲武にも……かえでの奴を問い詰めたら男を買いに行くときにたまに言ってたそうだ。かえでが言うにはとりあえず酷い合成肉のたれで食わせているような焼鳥とは名ばかりのものが出るだけで月島屋の味とは比べ物にならねえらしい」


 かなめは不安がる誠をそうなだめすかす。


「じゃーん!皆さんこれを見てください!」


 階段を駆け上がって来たのはアメリアとパーラだった。そのアメリアは何やら金色のもさもさしたものを手にしていたのが誠には気になった。


「アメリアさん、何持ってるんです?」


 誠は素直に疑問を口にすると同時に、こんな時でも付き合わされてしまうパーラに同情すると同時に隊でまともな女性はパーラ一人であり、自分を人間扱いしない女共から解放してくれるのは彼女しかいないのではないかと思うようになっていた。


「麗子さん、良いもの上げるわよ」


 アメリアはあくまでフランクに手にした金色のもさもさを手に掲げた。


 それは結局この前の映画作成の時には作ったのは良いが使わなかった金髪のウィッグだった。


「なんですの?それは……というかカツラにしか見えませんわね」


 麗子はアメリアの突然の行動に理解できかねるように首をひねった。


「いやあ、麗子さんにはこれが似合うと思って。じゃあ、被ってみて」


 アメリアはそう言うと強引に麗子の頭に金髪のウィッグをかぶせた。


 それは金髪縦ロールのまるでアニメの『悪役令嬢』がしているような髪型のウィッグだった。


「これが……どうしましたの?」


 突然、かつらを被らされて麗子は戸惑いながら周りを見回した。


 その顔を見たとたん、かなめは腹を抱えて笑い始めた。カウラも明らかに呆れ果てたという表情をしている。そしてパーラは一応は征夷大将軍である麗子にそんな無謀なことをするアメリアに呆れ果てたという表情をしていた。


「おい、麗子。似合ってんぞ!オメエにぴったりだ!オメエ髪なげえよな!明日、美容院に行ってその髪型にしてもらって来い!立派な『ご令嬢』だと誰もが認めてくれるようになるぞ!」


 大爆笑しながらかなめは麗子に向けてそう言った。


「金髪……ちょっとあのかえでさんと同じ髪の色というのが気に入りませんが……妻のわがままに付き合うのも夫の務め。よろしいでしょう。明日はちょうどお休みですので美容院に行って髪を染めてこの髪型にすることにしましょう。鳥居、予約を」


 誠はかなめの言うことを真に受けて『悪役令嬢』化する麗子に呆れてモノが言えなかった。


「麗子さん。そのウィッグはあげるわよ。このままずっと被ってるといいわ」


 アメリアの明らかに馬鹿にした口調にその真意を理解できない馬鹿な麗子はすっかりその金髪縦ロールが気に入ったというように口元に手を当てて典型的なお姫様笑いをして歩き出した。



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