第11話 何もない一日の後はいつものお店!
「はーい!お仕事終わり!飲みに行くわよ!」
終業のチャイムを待っていたかのように現れたのはいつものように珍妙なピンクとライムグリーンのどこでそんなものが売っているのか分からないオーバーオールの私服にすでに着替え済みの運航部部長アメリア・クラウゼ中佐だった。紺色の『ラスト・バタリオン』らしい長髪と糸目、そして何よりも長身の誠並みの大柄の女性の登場に筆を手にしたかなめは嫌な顔をしていた。
「オメエ、本当に暇なんだな。アタシはようやく仕事が終わったところだって言うのによ……アタシはこれを星間便で送るまでが仕事だ。それが終わらなきゃ何もできねえ。それまではいつも通り本部の出入り口のところで神前の描くオメエの作るエロゲのエロシーンの評論でもして時間を潰してろ。アタシは今手が離せねえんだからな」
結局一日中『検非違使別当』の仕事である書状の作成をしていたかなめはそう言うとうんざりした表情で硯を片付け始めた。
「西園寺。貴様は司法局実働部隊の隊員のはずだ。この前の県警からの依頼の報告書の担当は貴様だったはずだ。そちらの方は出来たのか?今日一日、忘れていたという『検非違使別当』としての職務以外何もしていなかったように見えたが、それでは小隊長で貴様の上司である私はどう貴様を指導すればいいんだ?どうせ逆らうから射殺するというんだろ?なら受けて立とう。貴様のチタンの頭蓋骨も私の1911の45APC弾の前では無力だ。丁度私も貴様に対する不満が溜まっていたところだ。銃撃戦もたまには悪くない」
カウラが厳しい口調でそう言うと端末を終了している。それが冗談なのか本気なのかは分からなかったが、カウラが今日のかなめのわがままにかなりのフラストレーションをため込んでいることはその口元の痙攣を見れば誠にも分かった。
「県警の下請け仕事よりも甲武の貴族の役目の方が大事なんだ!アタシは貴族!その貴族の地位を守るために片手間で警察官をしているの!どっちが本業かと言えばこの仕事が副業なんだ!カウラ、途中でコンビに寄ってくれ。コイツを星間便で発送しないと後で色々面倒なんだ。甲武が犯罪者だらけになって親父からの依頼でアタシ等が治安出動を依頼されるなんて言う面倒な目には遭いたくねえだろ?それまでは銃撃戦はお預けだ。貴族にとっては銃撃戦より『官位』を維持することの方が大事なんだ」
かなめは基本的に自分の事しか考えないのでカウラにそう言うと最後の巻物を段ボール箱に入れてそれに蓋をした。




