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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十二章 追い出される『将軍様』

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第109話 男はつらいよ

「かなめちゃんは本当に勝手なのね!その提案のどこがいいアイデアなのよ!誠ちゃんの意志はまるで反映されてないじゃない!すべて自分の都合ばかり!そんな理屈が通用すると本気で思ってるの?」


 アメリアはかなめのむりゃくちゃな理論にキレてそう叫んだ。


「その理屈が本気で通用すると思ってるのが西園寺の恐ろしいところだ。そんなことは最初から分かっていた話だ」


 アメリアの怒りの矛先はかなめに向うがカウラは冷静にそうツッコんだ。


「アタシは未来の関白。関白は甲武の独裁者。独裁者は自由勝手にしてもいい。だからアタシは自由人として勝手に生きる。そしてそのアタシが神前を『婚約者』と決めた。別に人からどうこう言われる筋合いはねえ!神前の意志?なんでそんなことをアタシが考えないといけねえんだ?それにアタシを知ればアタシ以外の女は見れない身体になる。そう決まってるんだ。なあ!神前!」


 かなめは相変わらず暴論を振りかざしてアメリアに反撃する。


「ああ、なんてことなの……誠ちゃん。二人の愛の日々はこの独裁者によって阻まれようとしているのね……なんてかわいそうな誠ちゃん……」


 アメリアは誠の手を取ってそう言ってわざとらしい泣き顔を浮かべたが当然涙は流れてはいなかった。


「愛の日々?そんなものは貴様の妄想だ。それよりも神前。貴様が西園寺の『婚約者』になるということは私の純情を踏みにじる人でなしに落ちるということだ。その責任をどう取るのかはっきり説明してもらおう」


 アメリアから庇ってくれるものだと信じていたカウラまでもが怒りの矛先を誠に向けてきた。


「それはその……カウラさんが『愛の手紙』を送ってくるようになったのは僕が頼んだわけじゃ無いので……」


 誠はそう言って言い訳がましく舌を向いた。


「それでも貴様は私のすべてで劣情を満たし私を穢した。その責任をとる必要はあるとは思わないのか?」


 画面のパチンコ台の十二連荘を止めてカウラが誠を鋭い目つきで見つめてくる。


『あれか?田安中佐に親切にしない人には罰が下るという法則が僕にも適応されているのか?確かに僕は田安中佐を馬鹿にしていた。でもそれを言うなら西園寺さんもカウラさんもアメリアさんも同罪じゃないか!なんで僕だけ……』


 誠は心の中でこれまでの行いを反省してみたがどう考えても自分の境遇の理不尽さしか思いつかなかった。


「神前先輩」


 そう言って話しかけてきたのは笑顔のアンだった。アンだけは自分の事は分かってくれる。確かに女装はしているし彼氏と毎晩ラブホテルに出かけるのを日課としているが同じ男として気持ちは共有できる。誠はそう信じた。


「神前先輩の為にお金を貯めて女性型義体の性転換手術のお金が溜まるまでに西園寺大尉とは離婚してくださいね。そうしないと僕の夢が壊れてしまうので」


 アンは相変わらず誠の理解を超えた発言を平気でした。


「あのー……それってどういう意味なのかな?」


 誠はアンの言ったあまりに斜め上を行く発言に唖然としていた。


「神前先輩は女性が好きなんでしょ?僕が女性の身体を手に入れれば神前先輩もきっと僕の事を振り向いてくれます。だから、西園寺大尉と一時的に結婚して、そして離婚して僕の所に来てください」


 誠は思った。この隊にまともな思考の人間はいないのだと。


『おい、アン!お前の脳内では僕はバツイチ決定なのか?おかしくないか?その考え方!』


 誠はこの身勝手な『女達』の思考回路についていくことが出来ずがっくりとうなだれた。

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