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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十一章 売り買いの対象となったヒーロー

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第107話 だんだん待つにも飽きてきて

「それはそうと、監査長いですね。あの田安中佐に部隊の予算表とか見る能力が有るんですかね?それともあの説明の上手い高梨部長でも手を焼くほど田安中佐は馬鹿なんですか?西園寺さん、あの人の馬鹿さ加減は西園寺さんが一番ご存じなんでしょうね?どうなんでしょうかね?」


 とりあえずこれ以上おもちゃにされるのは御免なので誠はそう言って話題を変えた。


「そりゃあ決まってるじゃない。馬鹿なのよ。シュレッダー係すら務まらない将軍様に難しいデータ分析なんて不可能よ。最初は高梨部長も分かりやすく説明をしようとするけれどもちっとも話を聞こうともせずに自分の直感で滅茶苦茶言ってその場は混乱。そうなるとさすがに穏やかな高梨部長もキレて菰田君にバトンを渡して菰田君がわざと難しい数字を並べてけむに巻いてそれにうんうんうなずいて訳の分からない回答を返して二人を混乱させるのが手いっぱい。まあ、高梨部長には同情するわね。菰田君はどうでも良いけど」


 アメリアはランの椅子でふんぞり返りながらそう笑って答えた。


「そうだな。しかし、それにしては時間がかかっているな。一応士官学校は出てる訳だから数字くらいは分かるんじゃないのか?田安中佐のパイロットとしての能力は相手が神前だったとはいえそれなりに高いものだった。実務能力もやればできるんじゃないのか?これまでだって上の指示が悪かっただけで決して無能なのではないのかもしれない。周りが馬鹿扱いするから自分が馬鹿である事実に気付いていないだけかもしれない」


 カウラは半分関心を無くしたような感じでそう言った。


「あのお客さん、そんなに馬鹿なんですか?あの、僕にでも部隊の予算とか丁寧に分かりやすく説明してくれる高梨部長の言葉が理解できないなんて……中学生以下の能力で良く中佐なんて務まりますね。そんな学力の人が中佐をやってる軍隊なんてすぐに負けますよ」


 麗子を見ていないアンは興味半分にそう誠に尋ねてくる。


「ああ、たぶん田安中佐はアンの中学校の教科書を読むことは出来るだろうが理解することが出来る学力があるとは到底思えない人だった。あの人には単語を理解できてもそれをつなげて文章として理解することはおそらくできない。そう言う人だ」


 誠も正直に麗子の頭の中のレベルをアンに説明した。


「そんな人が中佐を務めてていいんですか?やっぱりそんな軍隊はすぐに負けますよ。だから前の戦争で甲武は負けたんですね」


 アンの言葉に一同が静まり返る。


「確かにアン君の言う通り甲武は第二次遼州大戦で負けてるからね……でも今は司法局に居るってことは……つまりうちが負けるってことじゃないの。かなめちゃんが言うように本当に疫病神ね」


 アメリアはそう言って麗子を一言で切り捨てた。


「しかし、西園寺はこうも言っていた。アイツはこの世の摂理に反するほどの運を持っていると。私はギャンブラーだ。運がどれほど勝負の中で重要な意味を持っているかを知っている。パチンコ台には解放台というものがある。いわゆる店の入り口から良く見えるところにそれは有る事が多い。いかにも玉が出る店だと客に印象付ける為にそんな位置に配置するんだ。私もそう言う台を狙うのだが、運が無い時はそんな台でも何万円かけても出ないことが有る。それだけ勝負には運が重要なんだ。その点では田安中佐には運が有る。まあ、それ以外何も無いのは事実だが」


 いかにも『パチンコ依存症』のカウラの説得力のある麗子評に誠は納得していた。


「じゃあ、今度の出動の時は『ふさ』に乗ってもらいましょう。運だけは良いんでしょ?縁起物のお守りとしてブリッジにパイプ椅子でも用意して縛り付けておけば意外と役に立つかもよ」


 アメリアは笑いながら冗談では済まないような話を平然とした。

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