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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十一章 売り買いの対象となったヒーロー

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第106話 西園寺姉妹からの誠の解放を誓う二人

「でもかなめちゃんにしろ、かえでちゃんにしろあの姉妹はやっぱりおかしいわよ。誠ちゃんを人間だと思って無いんじゃないの、二人とも。かなめちゃんは痛めつけて楽しむ性の玩具としてしか誠ちゃんを見て無いし、かえでちゃんはかえでちゃんで家臣の女に子供を作る道具とくらいにしか考えていないわよ。あの二人はやっぱりどうかしてる」


 かなめが居ないのをいいことにアメリアは滅茶苦茶を言い出した。


「クラウゼの言う通りだ。いくら神前がモテない愛を知らない宇宙人である遼州人だからと言ってやって良いことと悪いことが有る。あの二人にはその善悪の区別がついていない。西園寺はぶってぶたれるのが愛だというが、それは一般社会の常識から考えると異常だ。それならばドメスティックバイオレンスという言葉が存在するわけがない。日野は日野で神前の子種を勝手に採取して自分達が神前の力を得ることに利用したり神前に無断で子供を孕ませたり……アイツ等には人権意識というものはないのか?」


 カウラもまたかなめとかえでの悪口を言い始めた。


「でも二人とも悪い人では無いです……そう思わないと僕が報われません……」


 誠は静かにそう思った。かなめとかえでは悪人では無いと思い込まなければ生きていけない環境にあることくらいは自分でも理解できていた。


「いいえ、あの二人は悪人です」


 それでもフォローしてしまう自分に呆れながらそう言おうとした誠を制したのは意外にもアンだった。


「小隊長は優秀な軍人です。それは認めます。確かに僕にも優しくしてくれます。ただ、あの人は勝利の為なら手段を選ぶなと常々僕に言い聞かせています。その点では少年兵時代に僕を使い捨てのおもちゃとしか見ていなかった多くの上官達と何の違いも有りません。小隊長はきっと神前先輩を不幸にします!これだけは断言できます!」


 アンは意外な視線からかえでをそう評した。


「確かにかえでちゃんは目的の為なら手段を選ばないからねえ……悪人と言えばうちでは隊長に次ぐ悪人ね。しかも、あの人は『愛が有ればすべて許される』という考え方の持主だからすべての悪事はその言葉で正当化される。かなり悪質ね。時々私もあの美形と豊かな胸に引きつけられて魔の手に落ちそうな気分になることが有って、そうすると必ずかえでちゃんは甘い言葉をかけてきて食事に行かないかとか言って来るもの。まるで下心は見えないところが逆に怪しい。そいうか、その食事について言った女がどうなったかを知っているだけに下心を隠す天才だということは認めるけど」


 アメリアはそう言うと爪を噛みながら誠を見つめた。


「なんです?その視線は。僕に問題があると言いたい感じじゃないですか」


 自分を見つめて来るアメリアの糸目に誠は思わず冷や汗をかいた。


「神前も先ほど西園寺の事を自業自得と言っていたが、貴様の西園寺姉妹におもちゃにされる有様も自業自得だ。なぜ、そんな扱いは嫌だと断れない。西園寺には支配者面をされ、日野には性の玩具として遊ばれる。その原因を作ったのは他でもない神前自身だ。だが、その人の好さが神前の良いところなんだ。ここは小隊長として一肌脱がねばならないだろう。確かに神前を狙う地球圏の連中や『廃帝ハド』も脅威だが、それ以上の脅威はうちにある。それは西園寺姉妹だ!」


 カウラは決意を込めたようにそう言った。


「カウラちゃんばっかり狡い!私も入れて!とりあえずカウラちゃん。同盟を結びましょう。おなじ戦闘用人造人間『ラスト・バタリオン』として産まれたもの同士、誠ちゃんを悪の西園寺姉妹から救い出すためには命を懸けると」


 アメリアは強い調子でそう言った。


「悪の西園寺姉妹って……いつからあの二人は悪の組織の荷台女幹部になったんですか?確かに頭の中はそんな感じですけど」


 誠は自分の意志とは関係なく盛り上がるカウラとアメリアに『あんた達も同類だよ』と言いたいのを必死になって堪えた。

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